潰瘍性大腸炎の患者さんが、ペンタサ®やアサコール®、リアルダ®を内服していることがあります。

症状は落ち着いていて、下痢も下血もない。

血液検査にも大きな異常はなく、本人も元気に生活しています。

こうした患者さんから、ときどき聞かれます。

「もう治っているなら、薬をやめてもよいですか」

もちろん、聞かれなくても毎回考えますよね。

医療者側からしても薬は、「やめられるなら、やめたい」わけです。

ところで、糖尿病の患者さんが、少量の薬を内服してHbA1c6.6%だった場合には、

「一度、薬をやめて様子を見てみましょうか」

と言えることがあります。

血圧の薬でも、体重が減って血圧が十分に下がれば、減量や中止を試すことがあります。

では、潰瘍性大腸炎の薬はどうでしょうか。

症状がなくなったら、同じように一度やめてみてもよいのでしょうか。

結論から言えば、ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®だけで寛解を維持している患者さんでは、基本的に薬を続けるのが現在の標準的な考え方です。

「何年間飲んだら治療終了」という、明確な基準はありません。

寛解は、病気が治ったという意味ではない

潰瘍性大腸炎では、症状が落ち着いている状態を「寛解」と呼びます。

ただし、寛解は病気そのものが完全になくなったことを意味しません。

腸の炎症が抑えられ、症状が出ていない状態です。

そのため、潰瘍性大腸炎の治療には、二つの段階があります。

一つは、下痢や下血がある状態を落ち着かせる「寛解導入療法」。

もう一つが、落ち着いた状態を保つための「寛解維持療法」です。

ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®などの5-ASA製剤は、炎症を落ち着かせるために使うだけではありません。

症状がなくなったあとも、再燃を防ぐために内服する薬なのです。

3つとも、中身はメサラジン

ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®は、いずれも一般名をメサラジンといいます。

大まかに言えば、中に入っている有効成分は同じです。

違うのは、薬を包んでいる構造や、メサラジンが腸のどの場所で放出されるように設計されているかです。

ペンタサ®は、1996年に販売開始された薬です。
小腸から大腸まで比較的広い範囲でメサラジンが放出されます。

アサコール®は、2009年に販売開始された薬です。
主に大腸に到達してから薬が放出されるように作られています。

リアルダ®も大腸で作用する薬ですが、メサラジンが大腸全体へ広がり、直腸付近まで届くように設計されています。
2016年に販売開始された薬です。

また、現在は寛解期であれば、製剤によっては1日1回で内服できるようになっています。

何回にも分けて飲むより、1日1回のほうが続けやすい患者さんも多いでしょう。

薬を中止すると、再燃は増える

2026年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、寛解している潰瘍性大腸炎患者が5-ASA製剤を中止した場合の再燃リスクが検討されました。

経口5-ASA製剤だけで寛解を維持していた患者さんでは、薬を中止すると、継続した場合に比べて再燃の相対リスクが1.60倍になりました。

これは、再燃率が一律に60ポイント上昇するという意味ではありません。例えば、内服を続けた患者さんの再燃率が10%であれば、中止した患者さんでは約16%になる、という関係です。100人で考えると、再燃する人が10人から16人へ増えるイメージになります。

ただし、実際の再燃率は、寛解していた期間や内視鏡所見、病変の範囲などによって異なります。この論文が示した中心的な結果は、「中止すると再燃リスクが相対的に60%高くなる」という点です。

坐剤や注腸剤など、直腸から投与する5-ASA製剤では、中止後の再燃リスクは約2倍でした。

この結果からも、5-ASA製剤だけで寛解を維持している患者さんに対して、

「症状がないので、一度やめてみましょう」

と提案することは、現在の標準的な考え方とは言いにくいと思います。

再燃したときのダメージを考える

潰瘍性大腸炎の薬を中止するかどうかを考えるときには、再燃した場合に患者さんが受ける負担も考える必要があります。

糖尿病の薬をやめてHbA1cが少し上がった場合には、もう一度薬を再開すればよいと思います。

しかし、潰瘍性大腸炎が再燃すると、下痢や下血が始まります。

頻回にトイレへ行かなければならず、仕事や学校へ行けなくなることもあるでしょう。

炎症が強ければ、ステロイド治療や入院が必要になる場合もあります。

同じ「薬を一度やめてみる」でも、再び病気が悪くなったときのダメージが違います。

5-ASA製剤は、比較的長期間使用しやすい薬です。

もちろん、腎機能障害などの副作用には注意が必要ですが、副作用がない患者さんであれば、再燃を防ぐ利益のほうが大きいことが多いでしょう。

生物学的製剤を使っている場合は、少し話が違う

一方、すべての患者さんが5-ASA製剤を一生飲まなければならない、と単純に言い切ることもできません。

5-ASA製剤では病気を十分に抑えられず、免疫調節薬や生物学的製剤などへ治療を強化している患者さんもいます。

こうした患者さんでは、5-ASA製剤を中止しても、再燃リスクが明らかに増えなかったという研究結果があります。

現在の寛解を支えている中心的な薬が、生物学的製剤などへ移っているためと考えられます。

ただし、この部分のエビデンスはまだ十分ではありません。

こあら先生のひとりごと

つまり、潰瘍性大腸炎の方は、かなり長期にわたって僕の外来に来てくれるわけです。

他の病気が出現することもあるでしょう。

早期発見したいものです。

参考文献
Arzivian A,Rubin DT,Seow CH,et al.The risk of relapse associated with discontinuation of 5-aminosalicylates in inflammatory bowel diseases:a systematic review and meta-analysis.Inflamm Bowel Dis.2026;32(4):661-676.doi:10.1093/ibd/izaf277.
PubMed
最終閲覧日:2026年7月29日