リフィル処方箋について考えていると、一つ疑問が出てきます。
病状が安定していて、次の診察が3か月後でよい患者さんなら、90日処方ではいけないのでしょうか。
例えば、何年間も同じ降圧薬を飲んでいて、血圧も安定している患者さん。
アムロジピンを90日分処方すれば、次の診察は3か月後です。
一方、30日分を3回のリフィル処方箋にしても、次に医師が診察するのは同じく3か月後。
違うのは、患者さんが途中で2回、薬局へ行くことです。
そう考えると、
「90日処方で問題ない患者さんを、なぜリフィル処方箋にするのだろう」
という疑問が残ります。
リフィル処方箋とは
リフィル処方箋は、症状が安定している患者さんについて、医師と薬剤師が連携しながら、1枚の処方箋で最大3回まで薬を受け取ることができる仕組みです。
令和4年度の診療報酬改定で導入されました。
例えば、
アムロジピン 30日分
リフィル可 3回
と処方したとします。
最初は医師の診察を受けて薬局へ行きます。
2回目、3回目は、原則として病院を受診せず、薬局で薬剤師さんの確認を受けて薬を受け取ります。
元々の処方箋に「リフィル可」と回数を記載する仕組みです。
便利な制度ではあります。
ただ、その使いどころを考えると、やはり「長期処方でよいのでは」という問いにぶつかります。
実際のところ、私はリフィル処方箋を利用したことが、一度もありません。
厚生労働省は「長期処方またはリフィル」と書いている
ここで、厚生労働省の資料を読んでみます。
令和6年度診療報酬改定では、地域包括診療料などの施設基準として、
「患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であること」
を医療機関の見やすい場所に掲示することが求められました。
ここで少し気になるのが、「又は」という言葉です。
厚生労働省は、
「長期処方をやめてリフィル処方箋にしましょう」
とは書いていません。
「長期処方、またはリフィル処方箋」
としています。
さらに令和8年度診療報酬改定でも、この方向は続いています。
特定疾患療養管理料などについて、患者の状態に合わせて、医師の判断により長期処方やリフィル処方箋に対応できることを患者に周知する要件が追加されました。リフィル処方箋そのものについても、患者の認知度を高めるため処方箋様式が見直されています。
つまり厚生労働省は、長期処方とリフィル処方箋を対立するものとして扱っているわけではなさそうです。
どちらも、病状が安定した患者さんに対する選択肢として並べています。
実際、医師は「長期処方で対応できる」と考えている
厚生労働省は、リフィル処方箋がなぜあまり使われていないのかについても調査しています。
その調査では、リフィル処方箋を発行していない理由として、
「長期処方で対応が可能だったから」
という回答が多くみられました。
これは、実際に外来診療をしていると理解しやすい結果です。
病状が十分に安定している。
薬も変わっていない。
次回の診察は3か月後で問題ない。
そう判断したのであれば、90日分を処方すればよい。
すでにそのような診療をしている医師にとって、リフィル処方箋を新たに使う理由は、それほど多くないのかもしれません。
厚生労働省自身も、令和6年度診療報酬改定について「長期処方及びリフィル処方を適切に推進する観点」から見直しを行ったと説明しています。
ここまで読んで、私はリフィル処方箋の見え方が少し変わりました。
90日処方をしている医師に向けた制度ではないのではないか
例えば、病状が長期間安定している高血圧患者さんがいるとします。
薬も何年も変わっていない。
それでも14日あるいは28日ごとに病院を受診して、毎回同じ薬を処方されている。
この患者さんに、本当にそれだけの頻度で医師の診察が必要なのでしょうか。
医学的に3か月に1回の診察でよいのであれば、84日や90日分をまとめて処方する方法があります。
では医師が、
「そこまで長い日数の薬を一度に渡すのは少し心配だ」
と考えたらどうするか。
ここでリフィル処方箋が出てきます。
例えば、28日分を3回。
患者さんは28日ごとに薬局へ行きますが、そのたびに病院を受診する必要はありません。
つまり、
「長期処方が心配だから、短期処方を続けるしかない」
という二択ではなくなります。
「長期処方が心配なら、リフィル処方箋という方法もあります」
という第三の選択肢ができたわけです。
短期処方には、もちろん理由がある
もちろん、短期処方そのものが悪いわけではありません。
血圧が不安定。
薬を変更したばかり。
副作用が心配。
採血が必要。
服薬状況を確認したい。
こうした理由があれば、短い間隔で医師が診察することには意味があります。
問題は、
病状が安定しているにもかかわらず、特に医学的な理由なく、短期処方と頻回受診が続いている場合
です。
そこに対して厚生労働省は、
「長期処方にできませんか」
と問いかけている。
医師が、
「長期処方は少し心配です」
と答えるなら、
「それならリフィル処方箋という方法もあります」
と、もう一つ選択肢を示している。
私は、制度全体を眺めると、そのような構造に見えます。
これは厚生労働省が明示した制度目的ではなく、資料を読んだ私なりの解釈です。
ただ、令和6年度、そして令和8年度と、厚生労働省が一貫して「長期処方」と「リフィル処方箋」を並べていることを考えると、この理解には一定の整合性があるように思います。
リフィル処方箋の誕生は、誰に向けたメッセージなのか
90日処方で問題なく診療できている患者さんを、30日×3回のリフィル処方箋に変更する。
私は、そこにリフィル処方箋の中心的な意味があるとは、あまり思えません。
長期処方でよい患者さんは、長期処方でよいのでしょう。
一方で、
病状は安定している。
それでも短い日数の処方を続け、患者さんが何度も病院を受診している。
そんな患者さんについて、
本当に毎回、医師の診察が必要なのか。
必要でなければ、長期処方にできないか。
長期処方が心配なら、リフィル処方箋という方法はないか。
リフィル処方箋という制度の誕生は、そんな問いを医師側に投げかけているように感じます。
私には、リフィル処方箋の誕生は、すでに長期処方を行っている医師に向けたものというより、病状が安定した患者さんにも短期処方を続けている医師に向けたメッセージのように見えます。
こあら先生のひとりごと
だからまあ、僕たちには関係ないのですが、患者さんから求められることはあるでしょうから、リフィル処方箋について知っておく必要はあります。
参考文献
厚生労働省.長期処方・リフィル処方の活用について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken14/index_00014.html
厚生労働省.令和6年度診療報酬改定【全体概要版】
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf
厚生労働省.令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf
厚生労働省.令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)の報告案について
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598453.pdf