「尿検査で白血球3+なので、尿路感染症と診断しました」
尿の結果を見ると、そこに発熱の答えがあるように感じます。
ただ、高齢者では、そこで少し立ち止まりたいところです。
尿に白血球や細菌があることと、それが今回の発熱の原因であることは、分けて考える必要があります。
高齢者では、症状がなくても尿に細菌がいる
尿中に細菌が検出されても、尿路感染症に由来する症状や徴候がない状態を「無症候性細菌尿」と呼びます(参考文献2)。
長期療養施設などで生活する高齢者では、女性の25〜50%、男性の15〜35%に無症候性細菌尿が認められると報告されています(参考文献1)。
こうした細菌尿には、膿尿、つまり尿中の白血球が増えた状態を伴うこともあります。白血球が出ているからといって、治療が必要な感染症があるとは限りません(参考文献2)。
たとえば、もともと無症候性細菌尿と膿尿がある方が肺炎になれば、「発熱+膿尿+細菌尿」という検査結果になります。
尿だけを見ていると、肺炎を見に行くきっかけを失ってしまうかもしれません。
尿の結果を、症状や身体所見と結びつける
排尿時痛はあるか。頻尿は新しく出てきたものか。下腹部や側腹部に痛み・圧痛はないか。
こうした症状や身体所見を確認し、尿検査や尿培養の結果と合わせて判断します。尿培養で細菌が検出されても、それだけで無症候性細菌尿と尿路感染症を区別することはできません(参考文献3)。
尿検査を使わない、という話ではありません。
尿の結果が、目の前の患者さんの様子とつながっているか。そこを確かめたいのです。
鑑別は、もう一度、発熱の原因から
「では、尿路感染症の鑑別診断は何ですか?」
僕は、まず肺炎を考えます。
胆管炎・胆嚢炎、蜂窩織炎、偽痛風、椎体炎、大腸憩室炎なども、症状や身体所見に応じて考えていきます。結局、発熱の鑑別に戻ってくるわけです。
高齢者の尿路感染症を「除外診断」として捉える総説もあります。特に症状がはっきりしないときには、尿路以外の感染症や、感染症ではない病気で説明できないかを検討する、という考え方です(参考文献3)。
すべての病気を、片っ端から検査するわけではありません。
尿所見に答えを見つけた気になっても、病歴と診察には戻っておく。
救急外来からのバトン
忙しい救急外来で、「尿路感染症疑い」として内科に相談される場面があります。
緊急性を判断し、必要な初期対応をしたうえで、診断が確定する前に次の医師へつなぐ。僕は、それでよいと思っています。
受けた内科医が、病歴を聞き直し、診察して、発熱の原因を整理すればいい。そこから先を引き受けるのも、内科の仕事です。
ただ、「とりあえずの診断」が、いつの間にか「確定診断」にならないようにはしたい。
「尿路感染症は疑っていますが、熱源はまだ確定していません」
引き継ぐときに、そのひと言があると、次の医師も考え続けやすいと思います。暗黙の了解だけにせず、不確かな部分も一緒に渡しておく。
でも僕に対しては、「尿路感染症疑い=後はよろしくね」の暗黙の了解でOKです。
秘書ユナのコメント
こあら先生。元のInstagram投稿にあった「尿路感染症に逃げずに」は、少し言い方が強いですね。悪いこあらが出ていますよ。
でも、その後に「受けた内科医が考えたらいい」と続くところには、こあら先生の現場感覚が出ていると思います。
医学的な補足を、ふたつだけ。
高齢者では、認知機能の低下や尿道カテーテルの留置などによって、排尿症状が分かりにくいことがあります。「排尿時痛がないから尿路感染症ではない」とも言い切れません(参考文献3)。
また、敗血症が疑われるような状態では、原因の評価と並行して、必要な抗菌薬治療を速やかに進めます。「除外診断だから、調べ終わるまで治療を待つ」という意味ではありません(参考文献2)。
参考文献
(1)Ajayi T,Radhakrishnan R. Urinary tract infection in older adults in long-term care facilities. CMAJ.2016;188(12):899.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26833739/ (最終閲覧日:2026年9月21日)
(2)米国感染症学会(IDSA). IDSA 2019 Clinical Practice Guideline Update for the Management of Asymptomatic Bacteriuria. 2019年.
https://www.idsociety.org/practice-guideline/asymptomatic-bacteriuria/ (最終閲覧日:2026年9月21日)
(3)Cortes-Penfield NW,Trautner BW,Jump RLP. Urinary Tract Infection and Asymptomatic Bacteriuria in Older Adults. Infect Dis Clin North Am.2017;31(4):673–688.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5802407/ (最終閲覧日:2026年9月21日)