外来で処方薬を確認していると、バイアスピリン®とプラビックス®を、両方とも内服している患者さんに出会うことがあります。

「脳梗塞をやったので、ずっと飲んでいます」

患者さんに聞いても、いつまで2剤を続ける予定なのかは分かりません。紹介状にも、中止時期が書かれていないことがあります。

抗血小板薬を2剤使えば、血栓を防ぐ作用は強くなります。

一方で、脳出血や消化管出血などの危険性も上がります。2剤を開始する判断だけでなく、いつ1剤に戻すのかという「処方の出口」も考えておかなければなりません。

今回は、脳梗塞後にアスピリンとクロピドグレルを併用している場合について整理します。

今回扱う患者さん

最初に、話の範囲を決めておきます。

今回の対象は、軽症の非心原性脳梗塞、または一過性脳虚血発作(TIA)の発症後に、アスピリンとクロピドグレルを併用している患者さんです。

心房細動などによる心原性脳塞栓症では、抗血小板薬ではなく抗凝固薬が治療の中心になります。

冠動脈ステント、頚動脈ステント、頭蓋内血管治療などを受けた患者さんも、別の判断が必要です。

つまり、

「脳梗塞後に抗血小板薬を2剤飲んでいる患者さんは、全員同じ時期に1剤にする」

という話ではありません。

まず、脳梗塞の病型と、2剤を開始した理由を確認します。

抗血小板薬2剤は、長く飲むほど良いわけではない

脳梗塞やTIAの再発リスクは、発症直後ほど高くなります。

この時期には、作用機序の異なる抗血小板薬を2剤併用することで、1剤だけの場合よりも再発を減らせる可能性があります。

ただし、再発予防による利益は発症早期に集中しています。

時間がたつにつれて得られる利益は小さくなり、出血の危険性が目立つようになります。

3年ほど前の、僕のInstagram投稿(静岡こあらの臨床サポート NO.107)では、アスピリンとクロピドグレルの併用期間を、

「1か月以内は有効性と安全性のバランスが良い」

「3か月までは、再発リスクが高く出血リスクが低い患者さんを慎重に選ぶ」

「3か月を超える併用は、有効性が乏しく出血が増える」

という三段階で整理していました。

この基本的な考え方は、現在も大きく変わっていません。

基本の目安は1か月以内

『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』では、アスピリンとクロピドグレルの2剤併用は、発症早期の軽症非心原性脳梗塞に対して、亜急性期の1か月以内を目安に行う治療として推奨されています。推奨度A、エビデンスレベル高です。

根拠となった代表的な研究の一つが、CHANCE試験です。(参考文献①)

この試験では、軽症脳梗塞または高リスクTIAの発症24時間以内に治療を開始し、アスピリンとクロピドグレルを21日間併用しました。その後はクロピドグレル1剤にしています。アスピリン単独群と比較して、脳卒中の再発が減少し、中等度または重度の出血は増加しませんでした。

一方、POINT試験では、2剤併用を90日間継続しました。主要虚血性イベントは減少しましたが、大出血は増加しています。(参考文献②)

両試験は、対象となった脳梗塞の重症度はほぼ同じですが、実施地域、治療開始までの時間、クロピドグレルの初回量、アスピリンの用量、2剤併用期間が異なります。そのため、結果を単純に比較することはできません。

それでも、この2つの研究を並べると、

「2剤併用を始めること」だけでなく、

「利益の大きい早期に限定すること」

にも意味があると分かります。

1か月から3か月は、全員に必要な期間ではない

複数の研究をまとめたメタ解析では、1か月以内の併用は脳梗塞の再発を減らし、大出血の明らかな増加を認めませんでした。(参考文献③)

1か月から3か月の併用にも再発予防効果は認められましたが、大出血は増えています。3か月を超える長期併用では、脳梗塞再発を減らす効果が明確ではなく、大出血と全死亡が増加しました。

したがって、一般的な軽症非心原性脳梗塞であれば、まず1か月以内を基準として考えるのが自然です。

1か月を超えて3か月まで継続する場合には、脳梗塞の再発リスクと出血リスクを比較するとともに、動脈狭窄など、併用を延長する具体的な理由を確認します。

「念のため3か月」

ではなく、

「この患者さんには3か月必要である」

という理由が求められます。

3か月を超えていたら、すぐ中止してよいのか

外来で、発症から半年あるいは数年が経過しているにもかかわらず、アスピリンとクロピドグレルが続いている患者さんを見つけることがあります。

この場合も、継続理由を確認せず、その場で一方を機械的に中止するのは適切ではありません。

次の点を確認します。

(1)脳梗塞を発症した日

(2)心原性か、非心原性か

(3)頚部・頭蓋内動脈の狭窄や閉塞があるか

(4)冠動脈や頚動脈などにステントが入っていないか

(5)2剤を継続する理由が、紹介状や退院時要約に書かれているか

(6)黒色便、貧血、皮下出血、鼻出血などがないか

特別な理由が確認できなければ、処方した専門医に確認し、1剤への移行を検討します。

『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』でも、長期の抗血小板薬2剤併用は、脳梗塞再発を明らかに減らさず、出血性合併症を増加させるため勧められていません。

ただし、これは主にアスピリンとクロピドグレルの長期併用についての考え方です。

頚部・頭蓋内動脈の狭窄・閉塞がある患者さんや、複数の血管危険因子を持つ患者さんでは、シロスタゾールを含む2剤併用が選択されることがあります。日本で行われたCSPS.com試験でも、高リスクの非心原性脳梗塞患者に対するシロスタゾール併用療法が検討されています。(参考文献④)

「2剤はすべて長期投与できない」と単純化しないことも大切です。

1剤にするとき、どちらを残すのか

1剤にすると決めても、次に、

「アスピリンとクロピドグレルの、どちらを残すのか」

という問題が出てきます。

非心原性脳梗塞の再発予防には、アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなどが使用され、適応を満たす高リスク患者ではプラスグレルも選択肢になります。どの薬を選ぶかは、脳梗塞の病型、動脈狭窄の有無、消化管出血歴、薬剤の副作用、併存疾患などを踏まえて決めます。

したがって、一般医が紹介を受けるときには、

「1か月後に1剤にしてください」

だけでは、情報が足りません。

理想的には、紹介状に次のように書かれていると助かります。

「脳梗塞発症後28日でアスピリンを中止し、以後はクロピドグレル75mg/日を継続してください」

開始日、中止日、中止する薬、残す薬。

ここまで書かれていれば、処方を引き継ぐ側は迷いません。

問題は、薬ではなく引き継ぎにある

抗血小板薬2剤併用を開始するのは、脳卒中を専門とする医師であることが多いと思います。

その後、状態が安定すれば、かかりつけ医や一般内科医が処方を引き継ぎます。

専門医が重症患者さんや新規発症患者さんの診療に集中するためにも、この分担自体は自然です。

問題は、薬だけが引き継がれ、中止予定日が引き継がれないことです。

中止の指示がなければ、一般医は処方を継続します。

次の診察でも、その次の診察でも継続されます。そして、いつの間にか「以前から飲んでいる薬」になります。

これは個々の医師の知識不足というより、情報伝達の設計の問題だと思います。

前提・分析・結論

前提

軽症の非心原性脳梗塞または高リスクTIAに対し、アスピリンとクロピドグレルを併用している患者さんを考えます。

冠動脈・頚動脈などのステント留置後や、別の特別な適応がある患者さんは除きます。

分析

2剤併用の利益は発症早期ほど大きく、継続期間が長くなるにつれて出血の不利益が目立ちます。

日本のガイドラインでは、1か月以内が基本的な目安です。

1か月から3か月までの継続は、再発リスクが高く、出血リスクが低い患者さんを選んで検討します。

長期のアスピリンとクロピドグレル併用は、通常の再発予防としては勧められません。

結論

脳梗塞発症から1か月を超え、とくに3か月以上が経過しているのに、アスピリンとクロピドグレルが続いていたら、継続理由を確認します。

特別な理由がなければ、1剤への移行を検討するのが自然です。

秘書ユナのコメント

この記事は、患者さんが抗血小板薬を自己判断で中止することを勧めるものではありません。

同じ「脳梗塞後の2剤併用」でも、脳梗塞の病型、血管狭窄、ステント治療、併存する冠動脈疾患によって、必要な期間は変わります。

看護師さんや薬剤師さんが処方を確認したときには、「2剤であること」だけでなく、「終了予定日が記載されているか」に目を向けると、診療上の価値があります。

こあら先生のひとりごと

薬を始めるときには、理由が書かれます。

でも、止める日までは書かれていないことが多いんですよ。

参考文献①
Wang Y,Wang Y,Zhao X,et al.Clopidogrel with aspirin in acute minor stroke or transient ischemic attack.N Engl J Med.2013;369(1):11-19.doi:10.1056/NEJMoa1215340.
PubMed
最終閲覧日:2026年7月25日

参考文献②
Johnston SC,Easton JD,Farrant M,et al.Clopidogrel and aspirin in acute ischemic stroke and high-risk TIA.N Engl J Med.2018;379(3):215-225.doi:10.1056/NEJMoa1800410.
PubMed
最終閲覧日:2026年7月25日

参考文献③
Rahman H,Khan SU,Nasir F,et al.Optimal duration of aspirin plus clopidogrel after ischemic stroke or transient ischemic attack.Stroke.2019;50(4):947-953.doi:10.1161/STROKEAHA.118.023978.
PubMed
最終閲覧日:2026年7月25日

参考文献④
Toyoda K,Uchiyama S,Yamaguchi T,et al.Dual antiplatelet therapy using cilostazol for secondary prevention in patients with high-risk ischaemic stroke in Japan:a multicentre,open-label,randomised controlled trial.Lancet Neurol.2019;18(6):539-548.doi:10.1016/S1474-4422(19)30148-6.
PubMed
最終閲覧日:2026年7月25日