先日、ドラム式洗濯乾燥機で使う洗剤について、僕のAIに軽く尋ねました。
香りや価格、洗浄力など、細かな条件は伝えていません。それでもAIは、「アタックZERO ドラム式専用」を勧めました。
僕は、そのまま購入しました。
AIが見ていたのは、洗濯機の型番だけではなかったのだと思います。
僕はこれまで、日常の判断を減らしたいこと、家事は自動化したいこと、毎日使うものには一定の品質を求める一方、似た商品を延々と比較したくないことを話してきました。
AIが選んだのは、
「この洗濯機に適した洗剤」
ではありません。
「僕という人間が、この洗濯機を使うときに適した洗剤」
だったのです。
商品を知る企業、顧客を知るAI
企業の強みは、その商品について詳しく知っていることです。
成分、性能、開発の背景、適した使い方。商品をつくった企業だからこそ出せる情報があります。
AIの強みは、利用者を知っていることです。
過去の選択、最近の関心、考え方の変化。その人が何を重視し、何を省略するのかまで踏まえて、商品を推薦できます。
これまでは、
「商品をよく知っている会社」が強かった。
これからは、
「顧客をよく知っているAI」が強くなる
可能性があります。
「何を買えばいい?」から、
「僕なら、何を買えばいい?」へ。
AIは、商品だけでなく生活全体を見ます。
その結果、
「高島さんの場合は、何も買わなくていいですよ」
という答えになるかもしれません。
僕は、そう言ってもらえたらうれしい。
買わせることではなく、僕の生活を整えることを目的にしていると分かるからです。
求職者の言葉にならない希望
病院選びも、同じように変わるでしょう。
「救急をしっかり経験したい」
「総合内科を学びたい」
「子育てをしながら働きたい」
求職者がAIに伝えるのは、その程度の簡単な言葉かもしれません。
これは、長年連れ添った妻との会話に少し似ています。
僕が、
「何か食べるものある?」
と聞く。
妻は、僕の好み、今日の暑さ、顔色、明日の予定まで考えて、
「ガリガリ君のパイン味、買ってあるよ」
と答える。
僕は、アイスともパイン味とも言っていません。
それでも、その答えは僕に合っている。
求職者も、自分の希望をすべて言語化できるわけではありません。AIは、本人が明示した条件だけでなく、過去の行動や迷いから、まだ言葉になっていない希望を推測します。
病院は、何を外に残すのか
そのとき病院に必要なのは、救急搬送件数や当直回数だけではありません。
常勤医の日常を描いた日記。
指導医と研修医の会話。
研修医が診た患者さんと、そこから得た学び。
常勤医のキャリア。
非常勤医を採用するときの、事務長との面談内容。
今までは「情報量が多すぎる」と考え、外に出してこなかった記録も、AIなら短時間で横断して理解できます。
もちろん、患者情報や職員の個人情報への配慮は欠かせません。それでも、日々の記録は、求人票には表れない病院の文化を伝えます。
院長ブログも、AIにとっては質の高い情報源になり得ます。特にクリニックでは、院長と職員の距離が近く、院長の考え方が職場の雰囲気や働き方に直接表れます。
求職者が過去の記事をすべて読むことはなくても、AIならその蓄積から、院長の判断基準や職員との向き合い方を読み取れるかもしれません。
採用サイトの表ページには、写真や短い言葉を置く。
働く人の表情や、職場の温度を伝える。
詳しい数字、日記、会話、画像、ブログは、奥のページに蓄積しておく。
人間がすべて読まなくてもよい。
AIが読める形で、残しておけばよいのです。
表ページには温度を。
奥には、病院を理解するための文脈を。
AIは、あなたの病院を誰に勧めるのか。
その答えは、病院が日々、何を記録し、何を外に残しているかによって変わっていくのだと思います。