僕はイルベサルタンばっかり処方しているわけですが、その理由をひとことで言えば、なんとなくです。

では、心不全や腎症を意識してARBを使い分けるなら、何を根拠に考えればよいのでしょうか。

心不全の領域では、CHARMとVALIANT

カンデサルタン(ブロプレス)のCHARMは、慢性心不全の患者を左室駆出率やACE阻害薬の使用状況によって分けた、3つの試験から構成されています。全体では、プラセボに比べて心血管死と心不全による入院が減少しました。ただし、主要評価項目の総死亡は、未調整解析では有意差に届きませんでした。

バルサルタン(ディオバン)のVALIANTは、心筋梗塞後に心不全、左室機能障害、または両方を伴う患者が対象です。総死亡について、ACE阻害薬のカプトプリルに対する非劣性が示されました。両薬を併用しても生存率は改善せず、有害事象が増加しました。

糖尿病性腎症の領域では、RENAALとIDNT

ロサルタン(ニューロタン)のRENAALは、2型糖尿病性腎症の患者を対象とした試験です。プラセボに比べて、「血清クレアチニンの倍化・末期腎不全・死亡」のいずれかが起こるリスクを相対的に16%低下させました。腎機能悪化の抑制が認められましたが、死亡率の低下は認められませんでした。

イルベサルタン(イルベタン)のIDNTは、高血圧を伴う2型糖尿病性腎症が対象です。同じ複合評価項目のリスクを、プラセボに比べて20%、アムロジピンに比べて23%、それぞれ相対的に低下させました。

「検証された」と「ほかより効く」は別の話

「そのARBが、その患者群で検証された」ことと、「ほかのARBより、その臓器に効く」ことは別です。ここで挙げた試験はARB同士を直接比較していないため、その結果から薬剤間の優劣は判断できません。

秘書ユナのコメント

ARBごとのエビデンスの違いには、薬そのものの特性だけでなく、「どの疾患を対象に開発が進められ、臨床試験で何が示されたか」という歴史も反映されていると私は考えています。薬の使い分けを学ぶときは、薬理学に加えて、エビデンスが生まれた背景にも目を向けたいところです。

こあら先生のひとりごと

僕がイルベサルタンばっかり処方しているのは、糖尿病を診ることが多いからでしょうね。