こあら先生の覚え書き

金曜の勉強会で、少し面白い問いを出してみた。

「救急外来からの入院率を上げたい。そのとき、看護部は何をするべきか?」

一見すると、看護部には関係が薄いテーマに見える。
入院を決めるのは医師だからだ。

でも、こういうときに考えたいのは、「誰が決めているか」ではなく「どこで決まっているか」だと思う。

架空のアンケート結果を題材にして、少し考えてみる。

入院は「医師が決める」のか?

FACT
・入院の最終判断は医師が行う
・しかし判断材料は、環境・情報・制約に依存する
・救急外来では、ベッド状況や病棟の受け入れ体制が強く影響する

実際、アンケート結果を見ると興味深い。

入院の判断基準は
・入院での治療が必要
・経過観察が必要
が大半を占める(52件、28件)

これは予想通りだ。

しかし、問題はここではない。

入院できなかった理由はどこにあるか

FACT
入院が望ましいが入院できなかった理由として挙がったのは
・満床
・予約入院のため使用不可
・病床のミスマッチ
・患者側の拒否
・運用上の制約

つまり、「医学的判断」ではなく「運用」で止まっている。

ここがポイントだと思う。

私の現場感覚としては

ここで、私は一度立ち止まる。

入院率を上げるという課題を見たとき、多くの人は「医師の判断基準」に目を向ける。
ガイドラインを整備する、教育を強化する、そんな方向に行きやすい。

でも、このデータを見ると違う。

ボトルネックは、判断ではなく「流れ」にある。

問題の定義を変える

ここで問題を言い換える。

「救急からの入院率が低い」

これは事象に過ぎない。

本質的問題は何か。

私はこう考える。

「入院適応患者を、運用上の制約で取りこぼしている」

この一文に置き換わる。

この瞬間、打ち手は一気に具体的になる。

看護部が関われる領域

インスタのスライドで整理した論点は、実はかなり本質を突いている。

・救急患者を優先入院させ、予約は後で調整できないか
・個室しか空いていない場合の説明は十分か
・夜間の重症ベッド確保は日中に設計できないか
・救急ベッドでの長時間滞在は妥当か

これらはすべて、「看護部が関われる運用」だ。

つまり、医師の判断に介入せずに、結果を変えられる領域。

ここに気づくかどうかで、組織の質は変わる。

コンサルタント的に見ると

少し経営の言葉で言うと、

これは典型的な
process redesign(プロセス再設計)の問題だ。

診断や治療の質ではなく、患者の流れ(patient flow)が詰まっている。

そして多くの組織では、この手の問題が放置される。

少なくとも現場では改善されない。

理由は、だれの責任でもないから。

僕がもし看護部長なら

この場面では、私は一つだけ決める。

「報告の軸を、結果ではなく原因に置く」

入院率が何%だったか、ではなく
「なぜ入院できなかったのか」を毎週出す。

そして、そのうち看護部で動かせるものを分類する。

ここまで来ると、業務量報告ではなく「改善提案」になる。

この時点で、組織の空気は変わる。

結論

入院率は、医師が決めているように見えて、実は組織が決めている。

看護部が報告するべきなのは、業務量ではなく
「入院を阻害している要因」だと思う。

前提・分析・結論

前提
・入院判断は医師が行うが、実際には運用に強く依存する

分析
・入院できなかった理由の多くは医学ではなく病床運用にある
・看護部はこの運用領域に介入可能

結論
・看護部の報告は業務量ではなく、入院阻害要因の可視化に置くべき

秘書ユナのコメント

入院率という指標は、一見すると医師の裁量に見えますが、実際には病床管理・説明・タイミングといった複数の要素で規定されます。
現場で改善を進める際は、「誰が決めているか」ではなく「どのプロセスで止まっているか」を特定する視点が有効です。

こあら先生のひとりごと

会議で、だれかが記録した数字を、そのまま読み上げる人は多い。
でも、その数字で誰かの行動を変えた人は、あまり見たことがない。