新人看護師のストレスは、人間関係だけではなかった
金曜勉強会で新人看護師のストレスに関する論文を読みました。
読んだのは「プリセプターとしての関わり 新人看護師のストレス軽減に向けた考察」という論文です。平成15年度に東京医科大学病院へ就職した新人看護師126名を対象に、ストレスの内容を調べたものです。
新人看護師のストレスというと、僕は最初、人間関係を思い浮かべました。
先輩がこわい。
相談しづらい。
病棟の雰囲気になじめない。
そんなことが上位に来るのだろうと思っていました。
でも、論文を読むと違いました。
多かったのは、「知識、技術が不足していると感じる」「急変時何をしたら良いかわからない」「技術に自信がない」「医療事故をするのではないかと恐れを感じる」「仕事の責任が重く感じる」といった項目です。
つまり、新人看護師のストレスの中心には、人間関係だけではなく、「自分は現場でちゃんと動けるのか」という不安があるのだと思います。
これは大事な視点です。
看護師国家試験に合格する知識と、病棟で働くための知識は同じではありません。
もちろん、国家試験の知識は必要です。
そこは土台です。
ただ、患者さんの状態が変わったときに何を見るか。
誰に、どの順番で、何を報告するか。
どこまで自分で判断してよいのか。
どこから先は一人で抱えない方がよいのか。
これは、現場で働くための知識です。
新人看護師が苦しんでいるのは、知識がないからではなく、現場で使える形にまだ変換されていないからかもしれません。
技術も同じです。
採血。
点滴ルート確保。
急変時の動き。
報告の練習。
これらを、いきなり患者さんの前でうまくやるのは難しい。
だからこそ、シミュレータを使って、もっと何度も練習してよいと思います。先輩の腕で採血を1回経験して終わり、では、現場に出る不安を十分には減らせないかもしれません。
失敗してよい場所で、何度も失敗する。
そのうえで、患者さんの前に立つ。
その順番の方が、自然です。
新人看護師に「分からないことがあったら聞いてね」と言うだけでは足りません。
新人は、何が分からないのかも分からないことがあります。
聞き方も分からない。
聞いてよいタイミングも分からない。
だから、先輩側から具体的に渡す必要があります。
この場面では、まずここを見る。
これは急ぐ。
これは一人で抱えない。
この報告は、この順番で話す。
そういう小さな判断の型を、繰り返し伝えること。
それがプリセプターの役割なのだと思いました。
前提・分析・結論
前提
新人看護師は、国家試験に合格していても、就職直後から現場で迷いなく動けるわけではない。
分析
論文では、新人看護師のストレスとして、知識・技術の不足感、急変時対応への不安、技術への自信のなさが上位に挙がっていた。人間関係だけで説明すると、見落とすものがある。
結論
新人看護師のストレス軽減には、優しく話を聞くことに加えて、現場で働くための知識と技術を具体的に渡す教育が必要である。
こあら先生のひとりごと
新人看護師に必要なのは、励ましだけではないのだと思います。
もちろん、声をかけることは大事です。
ただ、それだけでは新人の不安は消えません。
何を見ればよいのか。
どこで先輩を呼べばよいのか。
どこまでは自分で動いてよいのか。
そういう小さな判断の型を、現場の中で何度も渡していく。
その積み重ねが、新人を少しずつ孤立から遠ざけるのだと思います。
参考文献
茨田真希子,久野雅子,牧野由香.プリセプターとしての関わり:新人看護師のストレス軽減に向けた考察.東京医科大学病院看護研究集録.2004;24:10-14.
https://tmu.repo.nii.ac.jp/records/8640
最終閲覧日:2026年5月22日.