僕はBBT大学を8年かけて卒業し、現在はBBT大学院の6年生です。
この14年間を振り返ると、自分の中で変わったのは、知識の量ではありません。
思考に支払うコストでした。
AIがなかった時代
BBTの代名詞とも言えるRTOCS。
毎週、「もし自分が経営者ならどうするか」を問われます。
例えば先週のテーマはホーチキ株式会社でした。
AIがなかった頃、この課題にどう向き合っていたか。
僕たちは、最初に仮説を1つ置くしかなかった。
例えば
「廃棄物処理施設でのリチウムイオン電池の発火が問題になっている。ならば、この分野にビジネスを広げるべきではないか」
こうやって先に結論を置く。
その上で、それを支える情報だけをピンポイントで集めて、時間内にまとめる。
僕の現場感覚としては、このやり方で回していました。
いわゆる演繹的な思考ですが、実態は少し違う。
選んでいるというより、そうするしかなかった。
なぜそうするしかなかったのか
ここで一度立ち止まって考えます。
帰納的に考えることはできなかったのか。
もちろん、そんなことはない。
ただ、コストが高すぎた。
データを広く集める時間。
整理する時間。
比較して検討する時間。
BBTの学生は専業ではありません。
皆、本業を持っている。
大前先生のようにリサーチャーがいるわけでもない。
この状況で、個人が帰納的に結論を作るのは現実的ではなかった。
だから仮説を先に置く。
これは思考法というより、環境に規定された戦略だったと思います。
AIが入って起きた変化
ところが、AIが入ると状況が一変します。
AIに問いを投げると、同じテーマに対して仮説が一気に出てくる。
しかも、それらはある程度整理された形で提示される。
これまで膨大な時間がかかっていた「情報収集」と「パターンの整理」が、一瞬で終わる。
帰納のコストが、ほぼゼロになった。
正確に言えば、AIは現実から法則を導いているわけではない。
過去のデータから、それらしい仮説を大量に生成しているに過ぎない。
でも、僕たちに見えているのは「選択肢が一気に増えた世界」です。
僕はこれを「疑似帰納」と考えています。
真剣勝負の中で起きたこと
この変化を、僕は遊びで体験したわけではありません。
提出期限がある。
評価がある。
自分の名前で残る。
その環境の中で、この変化に直面した。
これは単に便利になったという話ではない。
考え方そのものが変わる経験でした。
かつては、何もないところから仮説を「作る」ことが仕事だった。
今は違う。
目の前に並んだ仮説の中から、何を捨てるかを決めることが仕事になった。
本業で考える
私は(本当に)100の選択肢を検討しました。
その結果、プロとして選び抜いた3つの選択肢を、あなたに提示します。
あなたの価値観で1つを選んで下さい。
個人でも、このような仕事ができるようになったという事です。
社長に対するコンサルタントと同様に
患者さんに対する医師の説明としても
顧客に提供する価値は高くなっているはずです。
前提・分析・結論
前提:AIにより仮説生成と情報整理のコストが大幅に低下した
分析:従来は仮説を先に置く戦略が合理的だったが、AIにより選択肢を広げることが可能になった
結論:思考の中心は「仮説を作る」から「仮説を捨てる」へ移動している
秘書ユナのコメント
選択肢が増えること自体に価値があるわけではありません。むしろ、増えた選択肢の中から何を捨てるか、その理由を持てるかどうかでアウトプットの質は変わります。AIはその環境を一気に作り出したに過ぎません。
こあら先生のひとりごと
集める作業は外に出せるようになりました。
でも、捨てる作業は残ります。
そしてその先にある
「なぜそれを選んだのか」は、最後まで自分に残る。