気がついている人もいると思いますが、このブログの記事の元ネタは、Instagram「静岡こあらの臨床サポート」です。
2023年5月に投稿した「ナースのための 肺炎入院 診療報酬請求マニュアル」が、今回の記事の元ネタです。
当時は、肺炎患者さんが入院したときには、
・人工呼吸器を使ったかどうか(NPPVを含む)
・定義副傷病名があるかどうか(胸水・心不全・偽膜性腸炎の有無)
・A-DROPスコア(年齢・BUN・SpO2・意識障害・収縮期血圧で評価するアレ)
をカルテに書いておきましょうと説明しました。DPCコーディングに必要な情報だからです。
今回は、2026年8月時点の制度に合わせて整理します。
DPC(入院医療費の包括支払制度)
DPC部分の基本的な計算は、
診断群分類ごとの1日当たり点数(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3段階に分かれる)
✕在院日数
✕医療機関別係数(その病院の機能に応じて決まる係数)
です。
したがって、「肺炎なら1日いくら」と、一つの金額で説明することはできません。
Diagnosisと Procedureの Combination(DPC)で、肺炎✕人工呼吸器あり=◯◯点のように分類されます。
肺炎は52支払分類
2026年度の診断群分類点数表では、「040080 肺炎等」は、52支払分類に分かれています。
これは、
「軽症から重症まで、52段階に分けている」
という意味ではありません。
主に、次の情報を組み合わせて分類されます。
1.市中肺炎か、市中肺炎以外(医療・介護関連肺炎、院内肺炎)か
2.年齢
3.手術の有無(気管切開手術などですね)
4.人工呼吸の有無(NPPVも含みます)
5.定義副傷病の有無(心不全の有無)
6.A-DROPスコア(0~5点)
例えば、15歳以上65歳未満の市中肺炎で、手術、人工呼吸、定義副傷病がなく、A-DROPが0点の場合、1日当たり点数は、
入院期間Ⅰ 3609点
入院期間Ⅱ 2603点
入院期間Ⅲ 2212点
となっています。
一度、ツリー図を見てみて下さい。
「DPC ツリー図 2026」などと検索すると出てきます。
なお、誤嚥性肺炎は「040081 誤嚥性肺炎」として別に分類されています。
1.市中肺炎なのか誤嚥性肺炎なのか
「040080 肺炎等」と「040081 誤嚥性肺炎」は、根本的に別分類です。
なので、「肺炎等」なのか「誤嚥性肺炎」なのかを、レセプトではまず確定させる必要があります。
この最終判断は、主治医が行います。
2.A-DROPは、入院時の状態で評価する
「肺炎等」の場合、重症度を測る「A-DROPスコア」がDPC分類に使われます。
A-DROPスコアによって、DPCの支払分類が変わります。
医事課の方の思いを代弁するなら、
・来院時のサチュレーションをカルテに書いておいて欲しい。
・例えば、サチュレーション88%(室内気)などと。
・特に意識障害(意識変容)の有無は、忘れがちなので気を付けて下さいね。
だと思います。
検査結果は後から確認できます。
一方、入院時の意識状態や血圧は、記録がなければ後から正確に再現できません。
認知症がある患者さんでは、
「認知症あり」
だけでは不十分です。
「家族によれば普段は会話可能。本日は呼名で開眼するが、場所と日時を答えられない」
と書かれていれば、普段の状態から変化していることが伝わります。
つまり、意識障害(意識変容)あり、です。
3.人工呼吸器を使用したときは、J045を意識する
現在の「040080 肺炎等」では、「J045人工呼吸」がDPC分類の分岐に使われています。
気管挿管下の人工呼吸だけでなく、条件を満たす鼻マスク式人工呼吸器(NPPV)もJ045として扱われます。
人工呼吸器やNPPVを使用した場合には、
開始時刻
終了時刻
換気モード
設定条件
導入理由
導入前後の血液ガス(レセプトで P/F 比が求められる事もあります)
患者さんの反応
などを記録します。
もちろん、診療報酬請求とは関係なく、医学的管理のため、僕たちは記載しているわけですが。
4.現在の定義副傷病は「心不全」
2023年の投稿では、肺炎の定義副傷病として、
胸水
心不全
偽膜性腸炎
を挙げました。
令和8年度の「040080 肺炎等」に設定されている定義副傷病は、
050130 心不全
です。
心不全の有無は主治医が判断します。
心不全がある場合は、カルテに「心不全」の記載があると、医事課としては安心だと思います。
診療報酬請求も見据えた、看護記録・医師記録の例
実際の所見に合わせて書きますが、例えば次のような記録です。
「自宅から来院。救急外来到着時、室内気SpO₂86%、呼吸数28回/分。努力呼吸あり、会話は短文のみ。呼名で開眼するが、日時と場所を答えられない。家族によれば普段は意識清明。収縮期血圧88mmHg。〇時〇分、鼻カニューレ3L/分を開始。5分後、SpO₂93%、呼吸数24回/分」
医師の記録では、例えば、
「市中肺炎による急性低酸素性呼吸不全。入院時、室内気SpO₂86%、呼吸数28回/分、努力呼吸および意識障害を認めた。緊急入院の上、酸素療法と静注抗菌薬を要する」
など、診断と緊急入院を必要とした医学的な理由を明確にします。
DPCとはまた別に、入院時点で重症であり緊急入院が必要と判断されるなど、要件を満たした場合には、救急医療管理加算の対象になります。
こあら先生のひとりごと
カルテに「肺炎。入院」とだけ書いてあっても、診た本人には分かります。
でも、翌日の医師にも、看護師にも、医事課にも分かるかと言えば、たぶん分かりません。
カルテは、自分のためというより、次に読む人のために書くものだと思っています。