今回は、椎体骨折、いわゆる圧迫骨折について勉強してみました。
椎体骨折というと、
「転倒してから腰痛が続いている」
「動くと痛いので、じっとしている」
という病歴を思い浮かべます。
ただ、高齢者診療では、これほど分かりやすい形で受診するとは限りません。
内科外来でよく出会うのは、
「転倒してから、お腹が痛いと言って食べなくなった」
という訴えです。
救急外来ならば、
「転倒後から動かなくなり、今日は熱が出て、息も苦しそう」
という形かもしれません。
目の前にある問題は肺炎や脱水であっても、経過をさかのぼると、その始まりに椎体骨折が隠れていることがあります。
骨折の痛みで動かなくなる。食事や水分も減る。そして、別の病態が前景に出てきて受診する。
高齢者を診察するときには、このような流れも意識しています。
転倒していなくても、椎体骨折は起こる
さらに難しいのは、転倒したかどうかが、はっきりしない場合です。
骨粗鬆症で骨が弱くなっていると、尻もちのような軽い外力だけでなく、中腰になったり、重いものを持ったりしたことをきっかけに椎体骨折が起こることがあります。
痛みが軽いこともあり、本人が骨折に気づいていない可能性もあります。
「転んでいないから、骨折ではない」
とは言い切れないのです。
一番つぶれている椎体が、今回の骨折とは限らない
高齢者のレントゲンやCTを見ると、複数の椎体がつぶれていることがあります。
ここで注意したいのは、
最も大きく変形している椎体が、今回の症状の原因とは限らない
ということです。
目立つ変形は、過去に起きた骨折の名残かもしれません。
一方、今回新しく骨折した椎体は、まだほとんどつぶれておらず、レントゲンやCTでは目立たないことがあります。
画像上の変形の大きさだけで、今回の症状を起こしている「責任椎体」を決めるのは難しいのです。
新鮮骨折を見極めるにはMRIが役立つ
レントゲンやCTは、椎体の形や骨折の構造を確認するのに役立ちます。
一方、今回起きた新しい骨折と、以前からある古い骨折を見分けるには、MRI(磁気共鳴画像)が特に有用です。
MRIでは骨髄浮腫を確認できるため、どの椎体が今回の症状を起こしているのかを絞り込みやすくなります。
もちろん、MRIを撮らなければ絶対に診断できない、という意味ではありません。
ただし、複数の椎体変形がある高齢者で、新鮮骨折の責任椎体を見極めたい場合には、MRIが最も頼りになる検査だと思います。
まとめ
今回の覚え書きは、次の3点です。
(1)高齢者では、本人が気づかないまま、過去に複数回の椎体骨折を起こしていることがある
(2)画像で最も変形が目立つ椎体が、今回の症状の原因とは限らない
(3)今回の新鮮骨折を見極めるには、MRIが有用である
高齢者が「腰が痛い」と言わないからといって、椎体骨折を鑑別から外してよいわけではありません。
転倒後の腹痛、食欲低下、ADL(日常生活動作)の低下を見たときには、背骨にも目を向ける。
内科医が持っておきたい視点だと思います。
こあら先生のひとりごと
明確に「お腹が痛い」という患者さんで、胃カメラなんかもやって異常が見つからず、椎体骨折だったことがあります。
肺炎の原因が椎体骨折のケースは、しばしば経験します。