ステロイドは、とても大切な薬です。
膠原病、血管炎、リウマチ性多発筋痛症、間質性肺炎、腎疾患など、ステロイドがなければ病勢を抑えられない場面は少なくありません。僕も、内科医として何度も助けられてきました。
ただ、ステロイドを使うときに、忘れてはいけないことがあります。
骨です。
グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症は、ステロイド開始後の早い時期から進みます。ガイドラインでも、骨量減少は治療開始後3〜6か月以内に急速に進行するとされています。つまり、骨密度が下がってから考えるのでは、少し遅いのです。
少量ステロイドでも、高齢者では対象になりやすい
グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023で、まず見てもらいたいのは、「図2 診療アルゴリズム」です。
3か月以上ステロイドを使用中、または使用予定の患者について、既存骨折、年齢、ステロイド投与量、骨密度を点数化して薬物療法の要否を判断します。
計3点以上で薬物療法が推奨されています。
ここで大事なのは、65歳以上というだけで4点になることです。
つまり、65歳以上で3か月以上ステロイドを使うなら、プレドニンの量が少なくても、骨粗鬆症の薬物療法を考える場面になります。
少し強い表現に見えるかもしれません。
でも、リウマチ性多発筋痛症や関節リウマチの高齢者では、プレドニンが長く続くことがあります。少量であっても、期間が長ければ骨折リスクは無視できません。
参考文献
日本骨代謝学会 グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン作成委員会.グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023.Mindsガイドラインライブラリ.
ガイドライン情報はこちら(Mindsガイドラインライブラリ)
最終閲覧日:2026年5月26日
まずはビスフォスフォネート製剤を考える
例えば70歳、男性、リウマチ性多発筋痛症と考えて、プレドニン15mgで治療開始。
よくあるケースです。
ステロイドは減量しながらも、3か月以上は使用します。
まず候補になりやすいのは、ビスフォスフォネート製剤です。アレンドロネート、リセドロネート、ミノドロン酸など、日常診療でよく使う薬です。
ただし、ビスフォスフォネート製剤は腎機能が悪いと使いにくいことがあります。高齢者では、ステロイドを必要とする疾患に慢性腎臓病が重なっていることも珍しくありません。
そこで、次の選択肢を考える必要があります。
腎機能が悪い時は、プラリアを検討する
腎機能が悪く、ビスフォスフォネート製剤が使いにくい時に、選択肢として考えたい薬の一つがプラリア皮下注です。
一般名はデノスマブです。RANKLを阻害し、破骨細胞の働きを抑える薬です。
60mgを6カ月に1回、皮下投与する薬です。
腎機能低下例でも選択肢になり得る点は、内科診療ではかなり大きいと思います。ただし、気軽に使ってよい薬ではありません。
プラリアで注意するのは、低カルシウム血症です。
特に腎機能が悪い患者さんでは、投与後にカルシウムが下がりやすくなります。
活性型ビタミンD3製剤やカルシウム製剤の併用も検討します。
添付文書では、「低カルシウム血症の患者」が禁忌となっています。
そのため、投与前に血清カルシウムを確認する。
必要に応じて補正する。投与後もカルシウムを確認する。
ここは外せません。
「腎機能が悪いからプラリア」はよいのですが、「プラリアなら腎機能が悪くても安心」と考えると危ない。僕は、ここで一度立ち止まります。
前提・分析・結論
前提
ステロイドによる骨粗鬆症は、開始後早期から進行し得る。骨密度だけでなく、年齢、既存骨折、投与量、使用期間を含めて骨折リスクを見る必要がある。
分析
65歳以上で3か月以上ステロイドを使う患者では、少量でも骨粗鬆症治療の対象になりやすい。第一候補はビスフォスフォネート製剤だが、腎機能低下例では使いにくいことがある。その場合、プラリアは選択肢になるが、低カルシウム血症への注意が必要である。
結論
ステロイドを使うなら、骨粗鬆症対策も同時に考える。腎機能が悪くビスフォスフォネート製剤が使いにくい時は、プラリアを検討する。ただし、カルシウム管理を省略してはいけない。
秘書ユナのコメント
ステロイド治療では、病気を抑えることに意識が集まりやすくなります。しかし、高齢者では、骨折を防ぐことも治療の一部です。
脆弱性骨折は、単なる合併症ではありません。歩行、通院、在宅生活、介護負担まで変えてしまいます。ステロイド開始時に骨粗鬆症対策を確認することは、患者さんの生活機能を守る医療でもあります。
Steroid treatment should begin with fracture prevention in mind.
ステロイド治療は、骨折予防を念頭に置いて始めるべきです。