病院には、予約変更や診療日の確認、入院費用の相談など、いろいろな電話がかかってきます。

一件ずつ対応すれば、その場の用件は済みます。でも、同じ問い合わせが繰り返されていることまで、院長に届いているでしょうか。

僕は、病院への電話には、案内の分かりにくさや手続きの使いにくさが表れていると思っています。

そうした声を月ごとに整理して、次に直すことを決める。「Voicet月報」と呼んで、そんな仕組みを考えています。

同じ問い合わせが続くところを見てみたい

例えば、診療日について同じ質問が何度も寄せられているとします。

電話を受ける側は、その都度、診療日を伝えます。それで一件の対応は終わります。

ただ、同じ質問が続くなら、ホームページの外来表が見つけにくいのかもしれません。古い案内が残っているのかもしれない。診療日と予約を受け付ける日が、混同されている可能性もあります。

対応した職員は、すでにそのことに気づいているかもしれません。

その気づきを、案内や運用を変更できる人まで届けたいのです。

患者アンケートや投書箱に加えて、日々の問い合わせにも目を向ける。病院の電話データを経営に活かすとは、まず、そういうことだと思います。

「Voicet月報」に残す情報

Voicetは、VoiceとDatasetを組み合わせた造語です。ここでは、電話対応の記録を月ごとに整理し、病院の改善に使う仕組みの名前として提案しています。

始めるなら、まずは一つの窓口で、期間を決めて試すのがよいと思います。既存の記録が使えるなら、それを活かしたい。

月報のために残す情報は、例えば次の程度です。

  • 電話を受けた日、時間帯、窓口
  • 主な用件。予約変更、診療日の確認、費用の相談など
  • 何が分からなかったのかを示す、短いメモ
  • その場で対応が完了したか、取り次ぎや折り返しが必要だったか

「予約について」という記録だけでは、後から読み返しても、どこを直せばよいのか分かりません。

「変更を受け付ける時間が分からなかった」とあれば、案内を見直す手がかりになります。

ただ、記録を詳しくするほど、電話を受ける人の仕事は増えます。使う予定のない項目まで集めず、月報を読んだあとで必要な情報を見直す。このくらいから始めたいと思います。

AIには、分類と要約を手伝ってもらう

短い記録でも、ひと月分が集まれば、読み通すには時間がかかります。そこでAIに、似た問い合わせをまとめたり、繰り返し出てくる内容を拾ったりしてもらいます。

例えば、「変更は何時まで」「午後でも予約を変えられるか」という記録を、「予約変更の受付時間に関する問い合わせ」として整理する使い方です。

分類の基準はこちらで決め、判断しにくい記録は確認が必要なものとして残す。分類した記録の一部を人が読み直し、取り違えがないか確かめる。件数は表計算などで集計し、要約の文章と数字が合っているかも確認します。

電話を受けた職員に読んでもらい、「現場で感じていることと合っているか」を聞くことも大切だと思います。

また、月報用の記録には、患者さんの氏名や電話番号など、傾向をつかむために不要な情報を持ち込まないようにします。氏名を消すだけで十分とは限らないので、具体的な病歴なども含め、AIに渡す内容を絞る必要があります。

個人情報保護委員会も、生成AIへの個人情報の入力について、利用目的の範囲や、サービス提供者による学習利用などを確認するよう求めています。院内で認められた利用方法を確認したうえで進めることが前提です。

「予約変更が多い」から、もう一歩考える

ここからは、運用を考えるための仮の例です。

月報で、予約変更に関する電話が多いと分かったとします。

ただ、その件数だけでは、何を変えるべきかは決まりません。

変更方法が分からずに電話しているのか。受付時間の確認なのか。通常の変更手続きとして電話を利用しているのか。病院側の都合で日程を変えてもらうことが続いたのか。

同じ「予約変更」でも、事情は違います。

もし受付時間の案内が分かりにくいのであれば、予約票やホームページの表示を直すところから始められます。変更手続きそのものに時間がかかっているなら、窓口の運用やオンラインで受け付ける方法を検討することになります。

理由が記録から分からなければ、電話を受けた職員に確かめる。分からない部分は、分からないまま残しておく。

AIがまとめた文章を読むときにも、この順番は大切にしたいと思います。

月報には、次にすることまで載せる

もしも僕が院長なら、読みたい月報は、問い合わせの多い順にグラフが並んだものだけではありません。

例えば、次のような項目があると、話を進めやすくなります。

項目月報に載せる内容
集計の範囲対象の期間と窓口、記録した電話の件数。全件か、一部を記録したものか
今月の気づき主な問い合わせの内訳と、繰り返されている困りごと
次に試すこと改善する箇所、担当者、実施する時期、何を見て結果を確かめるか
前月に変えたこと改善後の問い合わせの変化と、患者さんや職員が困っていないか

「予約変更の受付時間を予約票に追記する。担当部署を決め、翌月に同じ質問がどう変わったか確認する」

このくらい具体的になれば、月報を読んだあとにすることが見えてきます。

数字を比べるときは、記録の範囲や分類の仕方をそろえる必要があります。忙しくて記録できなかった電話が多い月と、丁寧に記録できた月を、そのまま比べることはできません。

電話の件数は、患者さんの人数とも違います。同じ人が何度もかけている場合がありますし、つながらずに諦めた人の困りごとは、応対記録には残りません。

電話から分かるのは、地域の声の一部です。窓口での相談や患者アンケートとも照らし合わせて考えたいと思います。

また、件数の少ない問い合わせでも、患者さんの安全に関わる内容は、その場で院内の報告経路につなぎます。月報を待つ話ではありません。

秘書ユナのコメント

電話の内容を記録してもらい、AIできれいな月報をつくる。

その月報を院長が読んで何も決めないのであれば、職員の仕事を増やしただけになってしまいます。

まずは一つ、直せるところを決める。翌月には、その結果を確認する。記録や確認の負担が大きければ、集め方も変える。

そして、電話を受けてくれた人に、「あの問い合わせを見て、ここを直しました」と返す。

私は、そこまでをVoicet月報の仕事にしたいと思います。

こあら先生のひとりごと

電話で聞かれたことは、ほかにも知りたい人がいるのかもしれません。

次の人には、聞かれる前にお伝えする。

病院の広報も、そういうところまでできるといいなと思います。