腎機能を確認するとき、eGFRは見やすい数字です。
クレアチニンを測れば、検査結果に表示される。前回との比較もしやすい。
ただ、その数字を見たあとで、尿検査の結果にも目を向けたいと思います。
慢性腎臓病(CKD)では、同じeGFRでも、尿蛋白や尿アルブミンの量によって将来の見通しが変わります。採血だけでは分からない部分があるのです(参考文献1)。

同じeGFRでも、尿所見でリスクは変わる
CKDの重症度は、原因となる病気、GFR区分、蛋白尿・アルブミン尿の区分を組み合わせて評価します。
eGFRは、腎臓が血液を濾過する量を推算した値です。単位はmL/分/1.73m²で、腎機能をそのまま%で表した数字ではありません。
ここで、2型糖尿病があり、eGFR55が3か月以上続いている2人を考えます。説明のための仮の例です。
1人は、尿アルブミン/クレアチニン比が10mg/gCr。
もう1人は、600mg/gCr。
どちらもGFR区分はG3aですが、アルブミン尿の区分は、それぞれA1とA3です。同じG3aでも、後者は腎不全や心血管イベントなどのリスクを、より高く評価します(参考文献1)。
僕が尿所見を確認したいのは、こういう違いがあるからです。
尿定性と、尿蛋白・尿アルブミンの定量を分けて考える
尿蛋白が「1+」だった。
そこから、どのくらい出ているのかを確認するのが定量検査です。
尿定性の結果は、尿の濃さにも影響されます。陽性だったときは、尿蛋白/クレアチニン比などで量を確かめます。随時尿でも、クレアチニンとの比にすることで、尿の濃さの影響を補正して評価できます(参考文献2)。
もう一つ、尿蛋白定性が陰性でも、少量のアルブミン尿は捉えきれないことがあります。特に糖尿病では、「尿蛋白は陰性でした」で終わらず、尿アルブミンの評価につなげたいところです。
日本腎臓学会の重症度分類では、糖尿病関連腎臓病は尿アルブミン、それ以外のCKDは尿蛋白を用いて、次のように区分しています(参考文献1、3)。
| 検査 | A1 | A2 | A3 |
|---|---|---|---|
| 尿アルブミン/クレアチニン比 | 30未満 | 30以上、300未満 | 300以上 |
| 尿蛋白/クレアチニン比 | 0.15未満 | 0.15以上、0.50未満 | 0.50以上 |
単位は、尿アルブミン/クレアチニン比がmg/gCr、尿蛋白/クレアチニン比がg/gCrです。
アルブミンは蛋白の一種ですが、尿蛋白と尿アルブミンは同じ検査ではありません。数値をそのまま置き換えることもできません。
なお、尿アルブミンの測定は、糖尿病のないCKDでもリスク評価に役立ちます。上の表は、日本の重症度分類での使い分けを示したものです(参考文献2)。
1回の異常で決めず、続いているかを確かめる
尿蛋白や尿アルブミンは、運動や感染などの影響で、一時的に増えることがあります。
初めて異常を認めたら、過去の結果と比べ、必要に応じて早朝尿などで再確認します。
CKDの診断では、eGFR60未満、またはアルブミン尿などの腎障害を示す所見が、3か月以上続いているかを確認します。eGFRが60以上でも、腎障害の所見が持続していればCKDに該当します(参考文献1、2)。
ただし、腎機能が急に悪化している患者さんを、3か月待ってよいという意味ではありません。急性の変化があれば、その時点で原因を調べます。
尿所見は、腎臓内科に紹介する判断にも使う
尿蛋白を定量すると、紹介を考えるときにも具体的な材料になります。
日本腎臓学会の紹介基準では、A3に当たる尿蛋白・アルブミン尿があれば、eGFRが保たれていても紹介の目安になります。
G3aでもA2以上なら紹介の対象です。G3b以降、つまりeGFR45未満では、蛋白尿の量にかかわらず紹介が勧められています(参考文献3)。
もちろん、表の数値だけで決めるわけではありません。血尿の有無、腎機能が低下する速さ、年齢、原因となる病気も確認します。
尿蛋白が少なくても腎機能が急に落ちているなら、気になります。eGFRが前回と同じでも尿蛋白が増えているなら、その変化を確かめたい。
両方を見ておくと、相談するときに伝えられることが増えます。
尿蛋白は、SGLT2阻害薬を検討する材料にもなる
尿蛋白・アルブミン尿は、治療を見直す材料にもなります。
血圧の管理、糖尿病の治療、減塩に加えて、病態に応じたARBやACE阻害薬の使用を考える。そこに、腎保護を目的としたSGLT2阻害薬の選択肢が加わりました(参考文献1、2)。
糖尿病を合併しないCKDでも、腎保護が期待できる患者さんがいます。
ただし、「尿蛋白が出ている人だけに使う薬」と覚えてしまうと、対象を狭めすぎます。KDIGO2024では、アルブミン尿が少ない場合でも、2型糖尿病や心不全の合併、eGFRの程度によって使用を検討する位置づけです(参考文献2)。
実際の処方では、薬剤ごとの適応や腎機能、脱水・ケトアシドーシスなどのリスクを確認します。食事が取れないときの休薬についても、あらかじめ相談しておきたいところです(参考文献4)。
尿の結果があると、その患者さんのリスクと、治療で期待することを考えやすくなります。
こあら先生のひとりごと
SGLT2阻害薬が出てきて、尿検査の重要性が上がったと思います。
参考文献
(1)日本腎臓学会編.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.第1章「CKDの診断と意義」、CKD重症度分類ほか。
ガイドライン本文(日本腎臓学会)
(2)KDIGO CKD Work Group.KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.Kidney International.2024;105(Suppl 4S):S117–S314.第1章、推奨3.7.1〜3.7.3ほか。
ガイドライン本文(KDIGO)
(3)日本腎臓学会作成、日本医師会監修.かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準.2024年。
紹介基準(日本腎臓学会)
(4)日本腎臓学会.CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation.2022年11月29日策定.日本腎臓学会誌.2023;65(1):1–10.
適正使用に関する資料(日本腎臓学会)
資料確認日 2026年9月30日