「最終更新 2026年8月25日」

胸部レントゲンで肺癌を見落とす。
誰にとっても、できれば避けたい出来事です。

肺尖部、肺門部、心陰影や骨・横隔膜と重なる病変は、意識して見なければ視線が届きにくい。

若手医師や救急外来で画像を見る医療者に向けて、私が毎回確認している順番と、撮影目的以外の範囲まで見る習慣を記録します。

胸部レントゲンで肺癌を見逃しやすい場所

胸部レントゲンで肺癌が見えにくい場所として、次のような部位が挙げられます。

・心陰影と重なる部位
・肺尖部
・鎖骨や肋骨と重なる部位
・肺門部
・横隔膜と重なる部位

切除可能だった非小細胞肺癌の見逃し例40例を検討した報告では、72%が上葉、60%が上葉の肺尖部または後方区域にあり、22%は鎖骨と重なっていました。

症例レビューでも、肺尖部、肺門・肺門周囲、心陰影後方、横隔膜と重なる領域が、代表的な盲点として示されています。(参考文献1、2)

ここまでは、教科書的な知識です。

私が気にしているのは、見えにくい場所を知っているだけでは、実際の視線がそこに届くとは限らないこと。

意識して見に行かなければ、視線が素通りしやすいのです。

私が毎回たどる確認順序

私自身、胸部レントゲンを見るときは、次の順番を崩さないようにしています。

まず、心陰影の縁をなぞる。
輪郭の破綻だけでなく、心陰影の内側に重なる肺野の濃度も見ます。

次に、肺尖部。
必ず反対側と比べ、鎖骨や上位肋骨の裏に何か隠れていないかを確認します。

その後に、肺門部。
血管影の流れや左右差が不自然になっていないか。

最後に、肋骨や横隔膜と重なる領域。
「骨だから」「横隔膜だから」と決めつけず、その前後の肺野を追います。

この順番を崩さない。

私にとっては、見落としを減らすための小さな仕組みです。

肺癌に限らず、胸部レントゲンを正常構造から確認する全体の順番は、別の記事「胸部レントゲン読影 異常を探す前に確認している8つの正常構造」に整理しています。

撮影目的に関係なく、写っている範囲を見る

もう一つ、意識していることがあります。

レントゲンに写っているものは、依頼理由に関係なく見る。

右肩痛で整形外科を受診すれば、肩のレントゲンを撮るでしょう。

しかし、その画像には肺も写っています。

腹部造影CTを救急外来で撮影すれば、肺底部が写り込みます。
そのまま流さず、肺野条件に切り替えて確認する。

胸部レントゲンに限らず、同じことです。

これは、テクニックというより姿勢の問題だと思っています。

You see only what you look for.
(人は、探しているものしか見えない)

私には、この言葉がいちばんしっくりきます。

症例画像で確認できる3つの盲点

以下の画像では、

1.心陰影と重なる肺癌
2.肺尖部で鎖骨や肋骨と重なる肺癌
3.肩のレントゲンに写り込んだ肺癌

を示しています。

いずれも、肺野の中央にある明瞭な腫瘤だけを探していると、視線が届きにくい場所です。

参考文献

1.Choi G, Nam BD, Hwang JH, Kim KU, Kim HJ, Kim DW.

『Missed Lung Cancers on Chest Radiograph:An Illustrative Review of Common Blind Spots on Chest Radiograph with Emphasis on Various Radiologic Presentations of Lung Cancers』

Taehan Yongsang Uihakhoe Chi.2020;81(2):351-364.

doi 10.3348/jksr.2020.81.2.351

PubMedで論文を確認する

最終閲覧日 2026年8月25日

2.Shah PK, Austin JHM, White CS, Patel P, Haramati LB, Pearson GDN, Shiau MC, Berkmen YM.

『Missed Non-Small Cell Lung Cancer:Radiographic Findings of Potentially Resectable Lesions Evident Only in Retrospect』

Radiology.2003;226(1):235-241.

doi 10.1148/radiol.2261011924

PubMedで論文を確認する

最終閲覧日 2026年8月25日