鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia)の原因として最も多いのは消化管出血です。
しかし胃カメラや大腸カメラで明らかな出血源が見つからないこともあります。
そのとき、もう一つ考えておきたい原因がHelicobacter pylori感染です。
ピロリ菌と鉄欠乏性貧血の関係を整理します。
鉄欠乏性貧血の原因としてのピロリ菌感染
76歳の男性、検診で「貧血」と言われて来院。
Hb 8.8、フェリチン 7.1。どう見ても鉄欠乏性貧血です。
出血源を探すために胃カメラをすると、所見は「慢性萎縮性胃炎のみ」。
大腸カメラでも軽い痔以外は異常なし。
便潜血も2回とも陰性。
――これは悩ましい。
出血が見つからない鉄欠乏性貧血。
こういうとき、つい「小腸も調べるか」と思いがちですが、
もうひとつ、見落とされがちな原因があります。
それが、ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染。
慢性萎縮性胃炎の背景にピロリ菌があると、
胃酸分泌の低下や鉄吸収の障害が起こり、
鉄欠乏性貧血の原因となることがあります。
実際、ピロリ菌感染者は非感染者に比べて
鉄欠乏性貧血になるリスクが1.72倍高いという報告もあります
参考文献
An updated systematic review and meta-analysis on the association between Helicobacter pylori infection and iron deficiency anemia. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27411077/ (最終閲覧日:2026年3月14日)
さらに、除菌によってヘモグロビン値やフェリチンが改善するケースも。
「消化管出血がない鉄欠乏性貧血」では、
ピロリ菌の除菌を検討する価値があります。
H.pylori陽性例では鉄欠乏性貧血の治療として除菌治療を行うことを考慮してもよい
参考文献
日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会. H.pylori感染の診断と治療のガイドライン. https://www.jshr.jp/medical/journal/file/guideline2016.pdf (最終閲覧日:2026年3月14日)
原因が同定されない鉄欠乏性貧血の発症にHelicobacter pyloriが関与しているとの報告がある
参考文献
鉄代謝と鉄欠乏性貧血ー最近の知見ー.日本内科学会雑誌 104 巻 7 号. https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/7/104_1383/_pdf (最終閲覧日:2026年3月14日)
前提・分析・結論
前提
鉄欠乏性貧血の原因精査では、消化管出血が最も多い。
しかし、明らかな出血源が見つからないこともある。
分析
ピロリ菌感染は鉄吸収障害や微小出血の原因となり、
除菌によって改善が見られる報告がある。
一方で、すべての患者が改善するわけではない。
結論
出血源が見つからない鉄欠乏性貧血では、
ピロリ菌検査と除菌治療の検討を加えることで、
診断と治療の幅が広がる。
こあら先生のひとりごと
86歳女性、鉄欠乏性貧血。がんばって胃カメラをやって異常なし。もっとがんばって大腸内視鏡検査もやって異常なし。この時に「遠くの大きな病院に行って小腸も調べてもらいましょう」と言えるのかという話です。
除菌ならやってみようかなと思うのではないでしょうか。