53歳の女性が、「不明熱」で紹介されてきました。
2週間前から熱が続いているそうです。
こういう紹介状を見ると、
「肺炎じゃないですか?」
「胸部CTも撮っていないのに、不明熱って言っちゃっていいんですか?」
などと、悪いこあらが出てきます。
まあ、それは置いておきましょう。
本当に原因の分からない発熱が続いているのであれば、僕は抗核抗体を測っておきます。
「先生はSLEを疑っているんですか?」
いやいや。
僕レベルで、症状だけからSLEをピタリと疑うなんて、なかなか無理な相談です。
では、なぜ抗核抗体を測るのでしょうか。
SLEは、ずっと鑑別に残ってしまう
不明熱を見たときには、大きく
感染症
悪性腫瘍
膠原病
を考えます。
もちろん実際の鑑別はもっと広いのですが、この3つはまず頭に置くところでしょう。
このうち、SLE、全身性エリテマトーデスは少し厄介です。
なぜか。
症状や検査所見が、あまりにも非特異的だからです。
口腔潰瘍がある。
関節が痛い。
胸が痛い。お腹が痛い。
腎機能が悪い。
白血球やリンパ球が減っている。
どれも、それほど珍しい所見ではありません。
だから不明熱の患者さんを診ていると、
「これ、もしかしたらSLE?」
が、いつまでも鑑別に残ってしまうのです。
そこで抗核抗体を測る
抗核抗体というと、
「SLEを疑ったときに測る検査」
というイメージがあるかもしれません。
僕は少し違う使い方をしています。
「SLEの可能性を大きく下げるために測る検査」
です。
SLE患者では抗核抗体の陽性率が非常に高く、2019年のEULAR/ACR分類基準を作る際に検討されたデータでは、80倍以上の抗核抗体の感度は97.8%でした。
ですから、抗核抗体が陰性なら、
「SLEではないと言い切れる」
とまでは言いませんが、僕ならSLEの順位をかなり下げて、ほかの病気を探しにいきます。
これは、不明熱を診ていると結構大きいのです。
EULAR/ACR分類基準でも、抗核抗体は入口にある
2019年のEULAR/ACRによるSLE分類基準を見てみると、この考え方がよく分かります。
この基準では、抗核抗体80倍以上が「エントリー基準」になっています。
まずここを通過しないと、その先にある発熱、血球減少、関節症状、腎障害、補体低下、抗dsDNA抗体などのスコアリングには進みません。
Instagramでは、
「抗核抗体が陰性なら門前払い」
と表現しました。
少し乱暴ですが、分類基準の仕組みとしてはそんな感じです。
不明熱では 抗核抗体でSLEを除外する!
秘書ユナのコメント
ここで一つ注意があります。
これはあくまで「分類基準」です。
抗核抗体が陰性なら、臨床的にSLEを100%否定できるという意味ではありません。
ANA陰性のSLEがゼロというわけでもないからです。
こあら先生のひとりごと
そうは言っても、ANA陰性のSLEを診断しに行く前に、やるべきことは100個あるでしょう。
抗核抗体陰性ならSLEはいったん外して良いと思います。
ちなみに、難病情報センターのSLEのところを見てください。
厚生労働省が作成した診断基準(令和6年4月1日)のところにも、
「エントリー基準: 抗核抗体80倍以上」と書いてあります。
参考文献
Aringer M,Costenbader K,Daikh D,et al.
2019 European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology classification criteria for systemic lupus erythematosus.
Ann Rheum Dis.2019;78(9):1151-1159.
doi:10.1136/annrheumdis-2018-214819.
論文はこちら(PubMed)
最終閲覧日:2026年9月29日
Leuchten N,Hoyer A,Brinks R,et al.
Performance of Antinuclear Antibodies for Classifying Systemic Lupus Erythematosus:A Systematic Literature Review and Meta-Regression of Diagnostic Data.
Arthritis Care Res(Hoboken).2018;70(3):428-438.
doi:10.1002/acr.23292.
論文はこちら(PubMed)
最終閲覧日:2026年9月29日
難病情報センター.
全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49).
診断基準はこちら(難病情報センター)
最終閲覧日:2026年9月29日