膀胱カテーテル留置中の発熱で考えること
膀胱カテーテルが入っている方が、発熱で救急外来に来る。
尿検査をして、血液検査をして、CTも見て、
「これは急性腎盂腎炎かな」
と判断する。
ここまでは、よくある話です。
でも、このときに忘れたくない一手があります。
膀胱カテーテルの交換です。
ある日の救急外来で、非常勤の先生がカルテにこう書いていました。
「膀胱カテーテル入れ替え」
「抗菌薬点滴」
この記載、地味ですが強いです。
抗菌薬をどうするかには、みんな意識が向きます。
セフトリアキソンか。
タゾバクタム・ピペラシリンか。
腎機能はどうか。
耐性菌リスクはどうか。
もちろん大事です。
でも、古いカテーテルをそのままにして治療を始めると、少し気持ちが悪い。
そこに菌がくっついているかもしれないからです。
長く入っているカテーテルの表面には、バイオフィルムができます。
そこに細菌が住みつきます。
だから、尿培養を出すなら、古いカテーテルからではなく、新しく入れ替えたカテーテルから出てきた尿を提出するほうが自然です。
NICEは、カテーテル関連尿路感染症で、カテーテルが7日を超えて留置されている場合、可能なら抜去、難しければ早めの交換を考えるとしています。ただし、交換のために抗菌薬開始を遅らせない、という点も大切です。
IDSAは、カテーテルが2週間を超えて留置されており、なお必要な場合には、症状改善を早め、再発リスクを下げる目的で交換することを推奨しています。尿培養は、新しく入れたカテーテルから、抗菌薬開始前に採るのが望ましいとされています。
つまり、まとめるとこうです。
発熱。
膀胱カテーテルあり。
急性腎盂腎炎を含む、カテーテル関連尿路感染症を疑う。
もちろん、この場面では、まず考える。
そのカテーテル、まだ必要ですか?
不要なら抜去。
必要なら、留置期間が長いカテーテルは交換を考える。
尿培養は、可能なら抗菌薬開始前に、新しく入れ替えたカテーテルから提出する。
抗菌薬だけでなく、カテーテルまで見る。
これを、自分の基本手技にしておきたいと思います。
参考文献
National Institute for Health and Care Excellence. Urinary tract infection (catheter-associated): antimicrobial prescribing. NICE guideline NG113. Published 23 November 2018. https://www.nice.org.uk/guidance/ng113/chapter/recommendations(最終閲覧日:2026年5月12日)
Hooton TM, Bradley SF, Cardenas DD, Colgan R, Geerlings SE, Rice JC, Saint S, Schaeffer AJ, Tambayh PA, Tenke P, Nicolle LE. Diagnosis, Prevention, and Treatment of Catheter-Associated Urinary Tract Infection in Adults: 2009 International Clinical Practice Guidelines from the Infectious Diseases Society of America. Clinical Infectious Diseases. 2010;50(5):625-663. https://academic.oup.com/cid/article/50/5/625/324341?login=false(最終閲覧日:2026年5月12日)
前提・分析・結論
前提
膀胱カテーテル留置中の患者さんが発熱し、急性腎盂腎炎やカテーテル関連尿路感染症を疑う場面は、救急外来でよくあります。
分析
長期留置されたカテーテルには細菌が定着しやすく、古いカテーテルから採った尿培養は解釈が難しくなることがあります。感染を疑うなら、カテーテルの必要性を見直し、必要なら交換したうえで培養を出す方が、臨床的にはすっきりします。
結論
膀胱カテーテル留置中の尿路感染症では、不要なら抜去。必要なら交換。尿培養は、できれば交換後の尿から提出する。これを自分の基本手順にしておきたいと思います。