(金曜勉強会より No.278)
こあら先生とユナの会話
こあら先生:
〇〇さんですが、熱が38.5℃出てます!
こんな電話はもう飽きちゃいました…。
ユナ:
挑戦的な入りですね。そんなこと言っていると看護師さんに嫌われますよ。
こあら先生:
すみません。嘘ついてました。謹んで撤回します、完全撤回。
ユナ:
よろしいです。
こあら先生:
それはそうと、呼吸回数ってあるじゃないですか。第5のバイタル「呼吸回数」。
ユナ:
①血圧、②心拍数、③脈拍数、④サチュレーション、⑤呼吸回数、でしたっけ?
こあら先生:
そうそう。呼吸回数の特徴は「目で見てわかるバイタル」だと思うんです。
測ったりする必要がないんです。
ユナ:
いや、測定するでしょう。30秒測って×2とか、やってますよ。
こあら先生:
そんなことされたら緊張して、ハアハアしたり、逆に息を止めたりしちゃいますよ。僕ならそうです!
ユナ:
まあ、そうかもしれませんね。
こあら先生:
なので呼吸回数は、測定とかしないで、さらっと見て感じることをお勧めします。
ユナ:
ご意見、いただいておきます。
こあら先生:
呼吸回数は唯一、五感でとらえられるバイタルなんですよ。
血圧は血圧計、脈拍は時計、体温は体温計、SpO₂はパルスオキシメーターが必要。
でも呼吸回数は、見ればわかる。
ユナ:
なるほど。ということは、呼吸回数は一瞬でチェックできるバイタルなんですね。
こあら先生:
その通り。僕の高速回診では、まず呼吸回数を見ています。
ユナ:
ちなみに、呼吸回数の上昇って、何種類かあるんですか?
こあら先生:
ええ。僕の提唱では、2つのタイプに分けられます。
ユナ:
・・・聞きましょうか。
タイプ①「酸素が足りない」
- 肺炎
- 肺水腫(心不全・腎不全など)
- 気管支喘息発作
- COPD急性増悪
- 肺塞栓症
- 気胸
- 高度の貧血 などなど
ユナ:
まずは酸素投与ですね。
タイプ②「酸素は足りてるけど体がしんどい」
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 尿毒症性アシドーシス
- 敗血症性ショック
- アルコール性アシドーシス
- 脳幹出血
- くも膜下出血
- 過換気症候群
- 甲状腺機能亢進症
- 発熱や疼痛 などなど
ユナ:
確かに大変そうです。
こあら先生:
そう。だから呼吸回数を見られるようになると、患者さんの「しんどさの種類」が一瞬でわかるんです。
ユナ:
呼吸回数、あなどれませんね。
前提・分析・結論
(1)前提
呼吸回数は、五つのバイタルサインの中で唯一「器具を使わず観察できる」指標である。
にもかかわらず、現場では血圧やSpO₂に比べて軽視されがちである。
(2)分析
呼吸回数の上昇には、大きく「酸素が足りない型」と「体がしんどい型」がある。
前者では低酸素血症を疑い、酸素投与を優先すべき。
後者ではアシドーシスや代謝異常、神経疾患などを想定し、原因検索が必要。
呼吸回数を“見て感じ取る”訓練は、臨床推論の第一歩となる。
(3)結論
呼吸回数は「目で見て感じる」バイタル。
一瞬で患者の全体像を掴むために、若手医療者こそ、まず呼吸回数を報告できるようになっておこう。
英語で言ってみる
“The respiratory rate is the only vital sign you can see without a device.”
(呼吸回数は、器具なしで見える唯一のバイタルサインである。)










インスタグラムならこちら https://www.instagram.com/p/DH_21p1zAAW/?img_index=2