病棟で働いていると、看護必要度という言葉が日常的に登場します。
私自身、はじめてこの制度を学んだときは、仕組みよりも「そもそも何を測っているのか」が分かりにくく感じました。

今日は、いちばん根本だけを拾い上げて、看護必要度の全体像をつかめるように整理します。

(1)看護必要度とは

厚生労働省は、こう考えています。

「難しい患者さんが入院している病院には、診療報酬を多めに支払うべきである」
「だから、各病院は “どれくらい大変な患者さんを受け入れているか” を報告してください」

この “大変さ” を測る指標が、看護必要度です。

大げさに聞こえますが、本質は非常にシンプルで、

(1)今日の入院患者の中に
(2)医療・看護の手間がかかる患者さんが
(3)どれくらいの割合で存在するか

それだけの指標です。

(2)「該当患者」を1日1回判定する

看護必要度では、すべての入院患者を

(A)該当患者
(B)ふつうの患者

このどちらかに分類します。

該当患者とは、

・重症の患者さん
・医者の手がかかる患者さん
・看護師の手がかかる患者さん

つまり、医療資源を多く必要とする患者さん のことです。

毎日、全員分を1回判定します。

(3)該当患者の割合が「看護必要度」

具体例を1つ挙げると、次のようになります。

(例)9月7日(土)
・全入院患者 100人
・該当患者   20人
・非該当患者  80人

この日の看護必要度は 20%

計算はとても単純で、

該当患者 ÷ 全入院患者 = 看護必要度(%)

これだけです。

(4)練習問題

8月の平均が次のとおりだったとします。

・全入院患者 100人
・該当患者   25人
・非該当患者  75人

では、この病院の8月の看護必要度は何%でしょうか。

……答えは 25% です。

ここまで理解できた方は、看護必要度の「核」の部分を完全におさえています。

前提・分析・結論

前提
看護必要度は、診療報酬制度における「患者の重症度・医療必要度」を示す割合であり、該当患者の比率を毎日計算して報告する仕組みである。

分析
制度は複雑に見えるが、全体像は「該当患者が何%いるのか」を知る指標に過ぎない。医療資源の投入量を可視化することで、病院ごとの負荷を評価している。該当患者の定義を理解すると、制度の目的が明確になる。

結論
看護必要度の本質は「大変な患者さんの比率」である。看護必要度の議論に迷うときは、この原則に立ち返ると理解が進む。

こあら先生のひとりごと

ちなみに、正式名称は「重症度、医療・看護必要度」です。

スコアリングシステムのA項目が重症度、B項目が看護必要度、C項目が医療必要度です。

2024年の改定では、急性期一般入院料1(いわゆる7:1看護)で、B項目が評価されなくなりました。A項目の緊急入院も、日数が短くなりました。

内科が得意とする「高齢者救急」ですが、7:1の病棟で高齢者救急を受けるのは生産性が低いんじゃないの?という、診療報酬改定を通じたメッセージです。