肺炎で入院中の患者さん。
CRPが順調に低下し、炎症の改善傾向を示していました。
しかし、血液データの中でひとつだけ、異常な動きをしている項目がありました。

それが BUN(血中尿素窒素) です。

ある日の血液検査データ

項目2月1日2月8日
ALB3.12.6
BUN7.832.3
Cr0.570.46
CRP21.14.2
WBC9,90014,600
Hb13.111.9
PLT31.118.4

CRPはしっかり下がっている。
感染は落ち着いてきているはずなのに、なぜBUNだけが急上昇しているのか。

脱水は点滴中なので考えにくい。
腎機能(Cr)もむしろ良好。
では、このBUN上昇の原因は……?

答えは「上部消化管出血」

のようなパターンでは、消化管出血を疑う必要があります。
特に上部消化管(胃・十二指腸)からの出血では、消化された血液中のタンパク質が体内で分解され、
アンモニア→尿素 の経路を経てBUNが上昇します。

Hbの低下がまだ目立たない段階でも、
BUN上昇が「最初のサイン」になることがあります。

臨床のポイント

・BUNの上昇は、Hb低下や黒色便に先行することがある。
・腎機能が安定しているのにBUNのみ上がる場合は、出血性疾患を疑う。
・特に点滴中で脱水が考えにくいケースでは、より強いシグナルになる。

現場の感覚

あくまで僕の感覚ですが、「BUNの上昇が先」で、「Hbの低下は後」です。

吐血やタール便で気づく前に、BUN上昇で気付けるかどうか。

「先生、BUNが上昇しています。そう言えば、便も黒っぽい感じがします」とか言われたら、感動しますよ。

前提・分析・結論

前提
感染症の治療経過中でも、BUN上昇は別の病態を示唆することがある。

分析
脱水や腎不全が否定的な状況でBUNのみ上昇している場合、
血中タンパクの異常代謝を伴う消化管出血の可能性が高い。
上部消化管出血では、Hb低下や黒色便よりも早くBUN上昇が現れることがある。

結論
上部消化管出血の早期発見には、BUN変動の観察が極めて有用。
特に入院患者では、BUN上昇を「見逃さない意識」を持つことが重要である。