血液培養や便培養の結果には、単なる病原菌以上の意味が隠れていることがあります。
Streptococcus bovis(= Streptococcus gallolyticus)と大腸がん、Fusobacterium necrophorumとレミエール症候群など、細菌と特定疾患の関連は臨床推論の重要な手がかりになります。金曜勉強会で整理した代表的なペアリングをまとめます。

(1)Streptococcus bovis(= Streptococcus gallolyticus)

血液培養でこの菌が出たら、まず感染性心内膜炎を疑います。
ただし、それで終わりではありません。
この菌は、大腸がんの合併と関連があることが知られています。

治療が落ち着いたら「大腸内視鏡もやっておこうか」と自然に口にできたら、
総合内科専門医らしい一言です。

(2)Clostridium septicum

同じく発熱+菌血症で検出された場合、
やはり大腸がん(あるいは悪性腫瘍全般)の合併を考えます。
嫌気性菌の中でも、この菌は腫瘍関連の感染症を起こしやすい代表です。

(3)Klebsiella oxytoca

便培養で検出された場合は、抗菌薬関連の出血性大腸炎を疑います。
抗菌薬使用後に下血がある患者では、Clostridioides difficileだけでなく、
この菌の関与も頭に置いておきたいところです。

数年前、腹部CTを読影に出したところ
「便培養で Klebsiella oxytoca が陽性です。抗菌薬関連出血性大腸炎もご検討下さい」
というレポートが返ってきたことがあります。

僕はその時に、この細菌を覚えました。

(4)Fusobacterium necrophorum

発熱+頸部腫脹の患者で血液培養からこの菌が出たら、
レミエール症候群(Lemierre’s syndrome)を疑います。
咽頭感染症→内頸静脈血栓症→肺などへの転移性感染症、
という流れをとる重症感染症です。

前提・分析・結論

前提

感染症の臨床では、培養結果が「何を意味するか」を文脈で解釈することが重要である。

分析

Streptococcus bovisやClostridium septicumなど、一見ありふれた菌でも、
特定の疾患との関連が確立しているものがある。
それらを即座に想起できるかどうかが、臨床推論の深さを決める。

結論

培養結果は「病原菌」ではなく「診断のヒント」として読む。
その一歩先の発想が、研修医を専門医へと導く。

秘書ユナのコメント

“Sometimes the bacteria are whispering the real diagnosis.”
(ときに、細菌が本当の診断をそっと囁いていることがあります。)

こあら先生のひとりごと

僕が研修医の時に、血液培養で「Streptococcus bovis」が陽性になったことがあります。ちょっと先輩の先生に伝えたら、「それは大腸がんがあると陽性になったりするから、大腸の内視鏡検査をしたほうがいい」と言われて、やってみたら、本当に大腸がんがありました。

これを読んでくれている先生、ぜひチャンスをつかんで言ってみて下さい。「それは大腸がんがあるかもしれないね」と。かなり尊敬されると思いますよ。