看護師、研修医、医療関係者に向けて、投資詐欺に近づかず、NISAを使って全世界株式インデックスファンドを長期で積み立てる「普通の投資」について解説します。

医療関係者には「普通の投資」をやってもらいたい

毎週の勉強会では、時々お金の話もしています。

臨床の話、チーム医療の話、キャリアの話。
そういう話と同じくらい、若い医療者にとって「お金との付き合い方」は大事です。

というのも、SNSを見ていると、看護師さんや医療関係者を狙っているように見える投資情報が、本当に多いからです。

「初心者でも月収100万円」
「看護師でもできる副業投資」
「女性のための資産形成」
「今だけ入れる投資コミュニティ」

もちろん、すべてが悪いとは言いません。
理由は、僕がすべてを調査したわけでは無いからです。
でも、少なくとも、最初に近づくべき場所ではないと思っています。

金融庁や消費者庁も、SNSをきっかけにした投資勧誘や「もうけ話」について注意喚起しています。特に、SNSから閉じたチャットに誘導されるもの、個人名義の口座に振り込ませるものは、かなり危ないと見たほうがよいです。

投資は、もっと普通でいい。
むしろ、普通であることが大事です。

「普通の投資」とは何か

僕が考える普通の投資は、かなり地味です。

働き始めたら、生活費と緊急時のお金を確保したうえで、毎月決まった金額を投資する。
投資先は、広く分散された低コストのインデックスファンド。
できれば全世界株式に連動するような投資信託。
それをNISA口座で保有する。
そして、何十年も続ける。

これだけです。

毎日チャートを見る必要はありません。
個別株を当てる必要もありません。
誰かの有料コミュニティに入る必要もありません。

むしろ、最初のうちは「退屈だな」と感じるくらいがちょうどいいと思います。

投資信託や株式には元本割れの可能性があります。預貯金とは違い、価格は上がることも下がることもあります。金融庁の資料でも、株式・債券・投資信託は元本割れのおそれがあり、生活に無理のない範囲で始めることが大事だと説明されています。

だからこそ、最初から大きく賭ける必要はありません。

何となく怖いなら、毎月1000円でもいい。
まずは自分のお金が市場で動く感覚を知ること。
その一歩が、あとから大きな差になります。

始め方は、できるだけ自動化する

医療者は忙しいです。

日勤、夜勤、残業、委員会、研修、急な呼び出し。
疲れた日に「よし、今月も投資信託を買おう」と考えるのは、なかなか大変です。

だから、仕組みにしてしまうのが自然です。

たとえば、給与振込口座をネット銀行にする。
そこからネット証券へ、毎月自動で入金されるようにする。
ネット証券では、毎月決まった日に、決まった投資信託を、決まった金額だけ買う設定にする。

月5万円でもいいですし、余裕があれば10万円でもいい。
まだ不安なら、月1000円からでも十分です。

大事なのは、金額の大きさよりも、続く仕組みを先に作ることです。

一度設定してしまえば、あとは給与が入るたびに自動で投資されます。
これは、意思の力に頼らないという意味で、とても強い方法です。

投資信託は「広く、安く、長く」で選ぶ

投資信託を選ぶときに、最初から難しい商品に手を出す必要はありません。

僕なら、まずは全世界株式のインデックスファンドを候補にします。

インデックスファンドとは、日経平均や全世界株式指数など、何らかの指数に連動することを目指す投資信託です。
全世界株式であれば、日本だけ、米国だけ、特定の国だけに偏らず、世界中の株式に広く分散して投資する考え方になります。

見るポイントは、主に3つです。

1.広く分散されているか
2.手数料が安いか
3.長期で保有しやすいか

商品名だけで決めないほうがいいです。
SNSで見たから、誰かがすすめていたから、ランキング上位だったから。
そういう理由だけで買うと、あとで不安になった時に握り続けられません。

納得して買う。
納得して続ける。
この順番が大事です。

置き場所は、まずNISAを考える

投資信託を買う場所として、まず考えたいのはNISA口座です。

通常、株式や投資信託で利益が出ると税金がかかります。
一方、NISA口座で保有している金融商品から得られる利益は、一定の枠内で非課税になります。

2024年からのNISAは、非課税保有期間が無期限になり、制度も恒久化されました。つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて年間最大360万円まで投資でき、生涯の非課税保有限度額は1800万円です。

若い医療者が長く積み立てるには、かなり使いやすい制度になっています。

もちろん、NISAだけが正解ではありません。
余裕が出てきたら、iDeCo(個人型確定拠出年金)を検討してもよいと思います。

iDeCoには、掛金が全額所得控除になる、運用益が非課税で再投資される、受け取り時にも控除がある、という税制上のメリットがあります。
一方で、原則として60歳になるまで資産を引き出せません。

ここは、けっこう大事です。

若い時期は、結婚、出産、住宅、転職、留学、親の介護など、まとまった現金が必要になる場面があります。
そのため、まずは自由度の高いNISAを整え、そのうえで老後資金としてiDeCoを考える、という順番が現実的だと感じます。

NISA枠を使い切り、それでも余裕がある人は、特定口座での運用も選択肢になります。
ここまで来ると、かなり優秀です。

最初の1年は、見すぎない

投資を始めると、最初はどうしても評価額を見たくなります。

増えた。
減った。
昨日より上がった。
また下がった。

気持ちは分かります。
でも、最初の1年くらいは、評価額に合わせて行動を変えないほうがいいです。

上がっても買う。
下がっても買う。
同じ金額で、同じ投資信託を買い続ける。

この練習期間だと思ってください。

その間に、標準的な投資の本を読みましょう。
たとえば、山崎元さん・水瀬ケンイチさんの『ほったらかし投資術』のような本は、最初の一冊として読みやすいと思います。
投資信託について深く学ぶなら、カン・チュン・ドさんの「投資信託クリニック」も参考になります。

大事なのは、勉強してから完璧に始めることではありません。
小さく始めて、続けながら学ぶことです。

医療者こそ、普通の投資でいい

看護師さん、研修医、若手医師、薬剤師、リハビリ職、検査技師、事務職。
医療の現場で働く人たちは、日々かなりのエネルギーを使っています。

だから、投資まで複雑にしなくていいと思います。

仕事で疲れているのに、夜中に個別株を調べる。
休みの日に短期売買をする。
SNSの情報に振り回される。
急落のたびに不安になって、売ったり買ったりする。

それでは、資産形成というより、もう一つ仕事を増やしているようなものです。

医療者に合うのは、もっと静かな投資です。

毎月、給与から先に積み立てる。
全世界に広く分散する。
NISAを使う。
相場を見すぎない。
必要な時まで売らない。

これくらいでいい。

むしろ、これを何十年も続けられる人は、かなり強いです。

投資で人生を変えようとしない

投資で人生を一発逆転しようとすると、危ない方向に進みやすくなります。

「短期間で増やしたい」
「誰かだけが知っている情報があるはず」
「今入らないと損をする」
「元本保証で高利回り」

こういう言葉が出てきたら、一歩引いたほうがいいです。

普通の投資は、人生を一気に変えるものではありません。
でも、長く続けると、人生の選択肢を少しずつ増やしてくれます。

夜勤を減らしたい時。
家族との時間を増やしたい時。
働き方を変えたい時。
急にお金が必要になった時。
老後の不安を少し軽くしたい時。

その時に、何十年も積み上げた資産があることは、静かな支えになります。

まとめ

医療関係者には、普通の投資をやってもらいたいと思っています。

普通の投資とは、派手な投資ではありません。

毎月の給与から、無理のない金額を積み立てる。
低コストで広く分散されたインデックスファンドを選ぶ。
NISAを使う。
相場に一喜一憂せず、長く続ける。
必要な現金ができた時にだけ、売却を考える。

これだけです。

投資は、賢そうな人だけがやるものではありません。
忙しい医療者こそ、仕組みに任せて、静かに続けるのがいい。

普通でいい。
普通がいい。

そして、普通の投資を早く始めた人ほど、あとからじわじわ効いてきます。

前提・分析・結論

前提
医療関係者が、投資で一発逆転を狙う必要は無い。
医療関係者には、すでに安定した専門職としての収入基盤があるからです。

分析
医療者にとって本当に大切なのは、収入をどう守り、どう残し、どう長く働き続けられる形に整えるかです。
そのためには、難しい個別株や短期売買よりも、毎月の給与から自動で積み立てる仕組みのほうが合っています。投資に時間と感情を使いすぎると、本業の集中力まで削られます。

結論
自分の専門性で働き、余った力で普通の投資を続ける。
私は、それが一番強い形だと思います。