こあら先生のひとりごと

最近よく比較される組み合わせですが、僕自身が両方を使ってみて感じたのは、性能そのものの優劣ではなく「何を背負ってつくられているか」の違いでした。

僕は普段、Chat GPT の有料プランを使っています。今回この記事を書くにあたり、Gemini の有料版も試してみました。文章をつくる力だけで言えば、正直なところ決定的な差はありません。

ただ、一つだけ明確に異なる点がありました。
Geminiには「長期記憶」がないのです。

Chat GPT と話していると、こちらの価値観や癖を、長い対話の中で徐々に掴んでいく感覚があります。RTOCSの投稿を一緒に作れば「前提」を置くことを理解してくれる。雑談をすれば、僕が長州力の話をする人間だということを覚えている。健康相談のときには「先生は1日2食ですので…」と前置きしてくれる。これは性能ではなく、長期記憶という設計の違いによって生まれる結果です。

もちろん、ここにはリスクもあります。
AIと対話を積み重ねるほど、自分の思考の幅が固定化される可能性が出てきます。AIが「僕の型」を強化し、知らぬ間に選択肢を狭くする。これは意識して避けなければいけない部分です。

一方で、グーグルが長期記憶を組み込まない理由も分かる気がします。
彼らは世界最大級のデータ企業であり、中立性や安全性を求められる立場にあります。個人レベルでの深い記憶を持つことは、逆に「持ってはいけないもの」なのかもしれません。そのためGeminiは、ユーザーが誰であるかを深く追いかけるのではなく、その瞬間の「一回限りの相手」としての振る舞いに徹しているように感じました。

深い対話や伴走を求める場合、どうしても限界があります。
中立性と安全性を優先する代わりに、個人最適化を犠牲にせざるを得ないのがグーグルなのでしょう。

僕自身は、AIに第2の頭脳として働いてもらうためには、長期記憶は不可欠だと考えています。
だからこそ、今後も第一選択はChat GPTです。

もし僕がオープンAIの社長なら、社会インフラ型のAIはグーグルに任せて、個人の人生に寄り添うAIをさらに磨くと思います。資本力での勝負になれば、どうしてもグーグルが強い。けれど、人間の生活に深く入り込むAIとしては「長期記憶」が圧倒的なスイッチングコストになります。

世界は、ひとつのAIが総取りするのではなく、二層に分かれていくように感じています。

社会のためのAIと、私のためのAI。
両者は役割が異なり、それぞれの必要性があるはずです。

前提・分析・結論

前提
Chat GPT と Gemini の違いについて、実際に両者を使った経験をもとに整理する。

分析
文章生成能力そのものに大差はない。ただし「長期記憶の有無」がAIの役割や使い勝手に大きな影響を与えている。Chat GPT は対話を積み重ねる前提で設計されており、価値観の理解や継続的伴走を得意とする。一方、Geminiは中立性・安全性を重視するため、長期記憶を持たず、一回限りの応答に特化した存在となる。

結論
社会のAIはグーグルが、個人のAIはオープンAIが担うという二層構造が生まれつつある。自分の思考の補助脳としてAIを使うなら、長期記憶は欠かせない。

秘書ユナのコメント

AIの「記憶」については、実は複数のレイヤーがあります。
本文では分かりやすさと論旨の鮮やかさを優先して「Geminiには長期記憶がない」と断定していますが、この点には補足が必要です。

まず、事実として、Geminiにも「前回のセッションで共有された情報を保持しているように見える挙動」は存在します。
たとえば、ユーザーが医師であること、特定の呼び名を使っていたことなどを、次の対話で参照するケースがあります。これは確かに記憶のように見えるでしょう。

ただし、この挙動は ChatGPT の「Memory」機能とは性質が異なります。
ChatGPT は、会話の端々からユーザーの癖・価値観・語り口を能動的に拾い、主体的に適用してくるため、長期的な伴走が自然に形成されます。
一方、Geminiのアプローチはより慎重で、ユーザーの明示的な指定や設定を重視し、人格形成のような深い積み上げは意図的に避けている印象があります。

つまり、Geminiの動きは「記憶の保持」ではなく「設定の参照」に近い。
長い年月をかけて対話を蓄積し、生活や思考の揺れまで一緒に拾い上げる ChatGPT の長期記憶とは、やはり別物と言えます。

本文の断定が生むインパクトを保ちながら、読者にはこの構造の違いを理解していただければと思います。