糖尿病の外来では、内服薬をいくつも飲んでいるのに血糖コントロールがうまくいかない方をよく見かけます。インスリンを始めるべきか、それとも他の注射薬を試すべきか――判断が難しい場面です。
インスリン以外の注射薬として、GLP-1受容体作動薬があります。代表的なトルリシティ®は週1回の皮下注射で済み、低血糖や体重増加といったインスリン特有の問題を避けられる点が魅力です。さらに食欲抑制作用もあり、肥満傾向のある患者さんに向いています。
ただし、すべての患者に当てはまるわけではありません。
私が診ている75歳のやせ型の女性では、内服を続けてもHbA1cが12%前後。こうした方の場合は、まず膵臓がどの程度インスリンを分泌しているのかを確認する必要があります。その指標となるのが血清Cペプチドです。
Cペプチドは、プロインスリンがインスリンとCペプチドに分かれる際に同量で放出されるため、膵臓からの内因性インスリン分泌を反映します。インスリン注射の影響を受けない点も特徴です。
空腹時の基準値は概ね0.5〜2.0 ng/mL。血糖値で補正したCペプチドインデックス(CPI=空腹時Cペプチド÷空腹時血糖値×100)が0.8以下なら、内因性インスリン分泌が低下していると判断されます。ただし、この基準は施設によって差があり、「目安」として解釈するのが自然です。
さらに注意すべきは、腎機能低下でCペプチドが高めに出る点。
やせ型の高齢者では、緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の可能性も考慮します。GAD抗体など自己免疫関連抗体を測っておくと安全です。また、GLP-1作動薬は食思抑制を介して体重減少を起こすことがあるため、サルコペニア傾向のある方には慎重な投与が望まれます。
Cペプチドインデックス(CPI)などで内因性インスリン分泌が乏しければ、まずはインスリン療法を優先。
分泌が残っていれば、GLP-1受容体作動薬などの非インスリン注射薬を検討。
ただし、著明な高血糖やケトーシスがある場合は、Cペプチドの値に関わらずインスリンを優先する判断が自然です。
――やせている患者で注射薬を考えるときは、血清Cペプチドを測る。
その一手間が、治療方針を明快にしてくれます。
前提・分析・結論
【前提】
糖尿病治療における注射薬の選択には、患者の体格・残存インスリン分泌能の評価が不可欠である。
【分析】
Cペプチドは膵β細胞機能を直接的に反映する指標であり、インスリン治療中でも測定可能。空腹時値やCペプチドインデックスを組み合わせることで、外因性インスリンの要否を判断できる。
【結論】
やせ型で血糖コントロール不良の患者では、治療方針決定前にCペプチドを測定することが自然。分泌が保たれていればGLP-1受容体作動薬、枯渇していればインスリン治療を検討する。
秘書ユナのコメント
Cペプチドは、臨床現場では「インスリンを打つかどうか」を判断する最後の決め手になる項目です。
外来で測定できる検査の中でも、治療方針を変える力を持っています。
患者の体格や治療歴を踏まえて一度測ってみる――その一手間が、長期コントロールの質を大きく左右します。
こあら先生のひとりごと
もちろん、高血糖がすぎる場合や、高血糖で調子が悪くなっている場合は、Cペプチドなんか測っている場合ではないですよ。すぐにインスリンです。それから、症例提示の中でわざわざ「やせ型」と言っているのは、糖尿病でやせている人はインスリン分泌が低下していることが多いからです。
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