研修医が病棟にいないことは、単なる居場所の問題ではありません。
多くの病院現場で、それは「信頼」「安全」「チーム医療」に直結する課題として認識されています。
実際、ナースステーションではこんな会話が交わされます。
「あそこの研修医の先生、今どこにいますか?」
この一言は、単に所在を確認しているのではありません。
現場の意識として、その医師が「今、頼れる存在かどうか」を測っている問いです。
この記事では、
・なぜ病棟にいない研修医は評価されにくいのか
・病棟での可視性が、なぜ信頼につながるのか
を、臨床現場と組織論の両面から整理します。
なぜ研修医は病棟にいないと信頼されないのか
病棟における医師と看護師の関係は、知識量だけで決まりません。
まず問われるのは、「必要なときに、すぐ話せるかどうか」です。
心理学には、単純接触効果(mere exposure effect)と呼ばれる概念があります。
人は、接する回数が多い相手ほど、無意識に信頼しやすくなる。
病棟で頻繁に顔を合わせる医師は、
・声をかけやすい
・状況を分かってくれていると思える
・相談しても大丈夫だと感じられる
一方、研修医室やPCの前にいる時間が長い医師は、
現場からは「見えない存在」になります。
物理的な距離は、そのまま心理的な距離になります。
このズレが、信頼の差として蓄積されていきます。
病棟に顔を出さない医師は、なぜリスクと見なされるのか
病院は、高度に分業されたナレッジワーカーの組織です。
しかし同時に、情報の非対称性が大きく、常にリスクと隣り合わせです。
看護師が不安を感じる瞬間は、こういう場面です。
「この指示を出した医師は、今の患者の状態を本当に見ているのか」
病棟に足を運び、
・患者の呼吸を聴く
・処置の流れを確認する
・看護師と短い会話を交わす
この積み重ねがあるからこそ、
「この先生は分かっている」という安心感が生まれます。
逆に、現場に姿を見せない医師の指示は、
現場では慎重に扱われます。
それは人格の問題ではなく、安全管理の問題です。
研修医が現場で稼ぐべきものは何か
研修医が病棟で積み上げるべき資産は、試験の点数ではありません。
それは「信頼」です。
信頼は、
・効率の良さ
・要領の良さ
・知識の多さ
だけでは増えません。
病棟に足を運び、
看護師の視線の中で判断し、
小さなやり取りを重ねる。
その中で、少しずつ蓄積されていくものです。
「先生、ちょうどよかった。少し見てほしい患者さんがいて」
この一言をかけられるようになったとき、
その研修医は病棟の一員として認識されています。
病棟にいることは、評価の問題ではない
誤解してほしくないのですが、
これは「評価されたいなら病棟に行け」という話ではありません。
病棟にいるという行為は、
医療チームの中で自分の責任範囲を引き受ける、という意思表示です。
トップに立つ人間ほど、
現場の状況を誰よりも把握し、
判断の結果を引き受ける必要があります。
それは研修医であっても同じです。
まとめ
・研修医が病棟にいないと、現場では存在が認識されにくい
・可視性は、信頼と安全に直結する
・信頼は、知識ではなく現場での関わりから生まれる
こあら先生が看護師さんの声を代弁
結論から言えば、病棟にいない研修医は「一緒に患者を守る人」として認識されにくい。
それだけです。能力や人柄以前の話です。
(1)急変時にそばにいない人は、最初から計算に入れられない
看護師にとって一番怖いのは、「今この瞬間」です。
血圧が下がる、呼吸が変わる、顔色がおかしい。
その場にいない医師は、呼ぶ対象にはなっても、頼る対象にはなりません。
(2)病棟にいないと、患者の変化を共有できない
看護師が見ているのは、数値ではありません。
表情、声、歩き方、食事量、トイレの回数。
病棟にいない研修医は、これらを前提にした会話ができず、話が噛み合わない。
すると「この人に話しても伝わらない」という評価になります。
(3)連絡がつきにくい医師は、仕事を増やす存在になる
探す、電話する、説明する、待つ。
それだけで、看護師の手は止まります。
結果として、「この研修医がいると現場が重くなる」という印象が残ります。
(4)不在が続くと、責任から距離を取っているように見える
外来でも検査でも構いません。
でも、姿が見えない時間が長いと、
「この患者を本気で背負っているのは誰か」という問いが生まれます。
見えない責任は、評価されません。
(5)病棟のリズムに乗らない人は、チームに溶け込めない
病棟には波があります。
忙しい時間、落ち着く時間、急に荒れる時間。
そこに合わせて動く医師は助かります。
合わせない医師は、どこか浮きます。
(6)現場を見ない指示は、どうしても浅くなる
「とりあえず採血」「念のためCT」。
病棟にいない研修医ほど、指示が一般論になりがちです。
看護師は、その曖昧さに不安を覚えます。
(7)看護師の観察が軽く扱われているように感じる
「何かおかしい」という感覚を拾ってくれる医師は信頼されます。
病棟にいないと、そのキャッチボールが成立しません。
結果として、「私たちの声を聞いていない人」という印象になります。
(8)報告のしやすさが失われる
誰に言えばいいのか分からない。
言っても来ないかもしれない。
そう思った瞬間から、報告は遅れます。
それは現場にとって、かなり危険です。
(9)成長しようとしている姿が見えない
病棟にいる研修医は、質問します。確認します。悩みます。
看護師は、その姿を見ています。
いない研修医は、評価の材料自体が残らない。
(10)最大の問題は「説明がないこと」
不在そのものよりも、
「今どこにいるのか」「何時に戻るのか」「誰が代わりなのか」
これが共有されないことが、信頼を壊します。
見えない状態は、不安を生みます。
こあら先生のひとりごと
えらい先生も、いっしょですよ。