胸部レントゲンに写っている肺がんを見逃さない

胸部レントゲンで肺癌を見落とす。
誰にとっても、できれば避けたい出来事です。

ただ、冷静に考えると、肺癌は必ずしも
「誰が見ても分かる場所」に写ってくれるわけではありません。

問題は、知識が足りないことではなく、
見えにくい場所を無意識に飛ばしてしまうこと。
今日はその点を整理してみます。

 

まず、事実から確認します。

胸部レントゲンで肺癌が見えにくい部位は、
古くからいくつか指摘されています。

・心陰影と重なる部位
・肺尖部
・鎖骨と重なる部位
・肺門部
・肋骨や横隔膜と重なる部位

これは教科書的な知識であり、
Radiopaedia などの症例集を見ても繰り返し示されています。

 

ここからが、私の意見です。

重要なのは
「見えにくい場所を知っている」ことでは足りない、という点です。

見えにくい場所は、
意識して見に行かなければ、ほぼ確実に視線が素通りします。

私自身、胸部レントゲンを見るときは、
次の順番を強く意識しています。

まず、心陰影の縁をなぞる。
左右差がないか、濃度の破綻がないか。

次に、肺尖部。
必ず反対側と比べる。
鎖骨の裏に何かが隠れていないか。

その後で、肺門部。
血管影の流れが不自然になっていないか。

最後に、肋骨や横隔膜と重なる領域。
「骨だから」「横隔膜だから」と決めつけない。

この順番を崩さない。
それだけで、見落としの確率は確実に下がると感じています。

 

もう一つ、大切な視点があります。

レントゲンに写っているものは、
依頼理由に関係なく、すべて見る。

右肩痛で整形外科を受診すれば、
肩のレントゲンを撮るでしょう。
しかし、その画像には肺も写っています。

腹部造影CTを救急外来で撮影すれば、
肺底部が写り込みます。
そのまま流さず、肺野条件に切り替えて確認する

これはテクニックというより、姿勢の問題です。

 

英語でも、この考え方は端的に表現されます。

You see only what you look for.
(人は、探しているものしか見えない)

単語メモ
look for:意識して探す

文法メモ
what you look for は 関係代名詞節で「探しているもの」を一まとまりで示します。

 

胸部レントゲンは、
特別な才能がなくても読める検査です。
一方で、油断すると簡単に裏切られる検査でもあります。

だからこそ、
見えにくい場所を「覚える」のではなく、
必ず見る場所として体に染み込ませる。

私が大事にしているのは、
その一点です。

前提・分析・結論

前提
胸部レントゲンで肺癌は必ずしも明瞭に写らず、心陰影や骨構造との重なりにより見えにくくなることがある。

 

分析
見落としは知識不足ではなく、視線が向かない部位を無意識に飛ばすことによって起きやすい。見えにくい部位を順番として固定して確認することで、見落としの確率は下げられる。

 

結論
胸部レントゲンでは、見えにくい場所を知るだけでなく、必ず見る場所として意識的に確認する姿勢が重要である。

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