血液ガスが苦手だ、という声をよく聞きます。
でも、僕の現場感覚としては、
難しいのではなく「順番が曖昧」なだけです。
血液ガスは、読む順番さえ固定すれば、
ほとんど自動的に整理できます。
今日は、5つの症例でそれを確認します。
まず、基準値を身体に入れておく
測定器から出てくる、あのペラペラの紙には、基準値は書いていません。
だから覚えておく必要があります。
pH 7.4
PaCO2 40
HCO3- 24
PaO2 80〜100
この4つが出発点です。
僕の読み方はいつも同じです
① pHは酸性か、アルカリ性か
② 原因は呼吸か、代謝か
③ 代償は起きているか
④ 体で何が起きているのか
順番は変えません。
ここを崩すと、途端に混乱します。
症例① 喘息発作
pH 7.26
PaCO2 57
HCO3- 25
pHが低い。アシデミアです。
PaCO2が上がっている。
原因は呼吸。呼吸性アシドーシス。
喘息発作で気管支が狭くなり、換気量が減っている。
その結果、CO2が体に溜まっています。
HCO3-はほぼ正常。
腎臓の代償はまだ起きていません。
実際の診察室では、
CO2が上がっている喘息は危険サインです。
救急外来で
「pH 7.26、CO2が上がっています」と電話すれば、
上級医はすぐに来ます。
なお、酸素化の評価が不要な場面では、
血液ガスは静脈血で十分なことが多い。
酸素はサチュレーションモニターで確認できます。
症例② 過換気症候群
pH 7.55
PaCO2 27
HCO3- 23
アルカレミア。
PaCO2が低い。
呼吸性アルカローシス。
過呼吸によりCO2が過剰に排出されています。
HCO3-はまだ下がっていない。
急性なので腎代償は間に合っていません。
数字だけ見れば安心しそうですが、
背景は様々です。
この過換気、原因は何でしょうか。
くも膜下出血かもしれません。
僕は、例えば内科外来で、
2日前から頭痛があると言われた場合でも
CTを躊躇しません。
救急外来なら、なおさらです。
症例③ ひどい下痢
pH 7.23
PaCO2 22
HCO3- 9
アシデミア。
HCO3-が著明に低い。
代謝性アシドーシス。
下痢でアルカリであるHCO3-が体外に失われています。
脱水による乳酸上昇や腎機能低下も加わることがあります。
PaCO2が低いのは代償。
呼吸でCO2を吹き飛ばしています。
僕がもし患者さんの立場なら、
この数字はかなりしんどい。
そして、できれば動脈採血は避けてもらいたい。
酸素化評価が不要なら、静脈血で十分です。
症例④ 糖尿病性ケトアシドーシス
pH 7.29
PaCO2 25
HCO3- 12
血糖 925
代謝性アシドーシス。
ケトン体という酸が増え、
それを中和するためにHCO3-が消費されています。
呼吸で代償しています。
この時点で、私の中では選択肢が2つに絞られます。
輸液とインスリン。
そして原因検索。
僕がDKAを見たとき、
まず探すのは感染。
次にインスリン中断。
三番目は心筋梗塞や脳卒中。
順番は決まっています。
症例⑤ COPD
pH 7.32
PaCO2 69
HCO3- 34
アシデミア。
PaCO2が高い。呼吸性アシドーシス。
しかしHCO3-も高い。
腎臓が時間をかけて代償しています。
慢性呼吸性アシドーシス。
過剰に酸素を投与するとCO2ナルコーシスを引き起こすことがあります。
僕が血液ガスで見ているのは「病態」
pHは結果です。
PaCO2は肺の問題。
HCO3-は腎臓と代謝の問題。
この二つの綱引きを見ているだけです。
僕は順番を変えません。 崩すと混乱するからです。
血液ガスは「知識」ではなく「型」です。
前提・分析・結論
前提
血液ガスはpH、PaCO2、HCO3-の3要素で構成される。
分析
①pHで方向性を決め
②原因が呼吸か代謝かを判断し
③代償の有無を確認することで病態が整理できる。
結論
血液ガスは難解な検査ではない。読む順番を固定すれば、再現性高く判断できる。
秘書ユナのコメント
血液ガスの本質は、数値暗記ではありません。
原因と代償の関係を理解することです。
こあら先生のひとりごと
ユナはそう言いますが、
僕は血液ガスを診断のためには使っていません。
判断の確認のために使っています。
重症かどうかは、まず患者さんの顔を見る。
血液ガスは、その後から追いかけてくる。
そうは言っても、血ガスは取りますよ。 ビビリですからね。