気管支喘息発作の患者さんを前にすると、
結局のところ、同じ問いに戻ってきます。
ステロイドは
何を
どれくらい
使えばいいのか。
この問いに、はっきりした正解はありません。
まず、事実から整理します。
UpToDateには、次のように書かれています。
The optimal dose for systemic glucocorticoids in asthmatic exacerbations remains unknown.
喘息増悪における全身性ステロイドの至適投与量は、いまだ明確ではない。
単語メモ
optimal:最適な
文法メモ
remains unknown は 現時点でも不明のままである という状態継続を表す表現です。
世界的にも、これが正解という量は決まっていません。
一方で、日本の喘息治療ガイドラインには、
実務上の目安が示されています。
全身性ステロイドは
プレドニゾロン換算で0.5mg/kg/日。
体重60kgであれば30mg/日。
多くの医師が共有している水準だと思います。
次に、投与経路の話です。
ステロイドは吸収が良く、
経口投与でも効果は静注と同等とされています。
飲める状態であれば、内服で十分。
ここは、知識として比較的広く共有されています。
では、私はどうしているか。
私の現場感覚としては、
内服可能な喘息発作の患者さんには、
プレドニゾロン30mg前後の内服を選ぶことが多いです。
理由は単純で、
それで足りることがほとんどだからです。
ただし、この話はここで終わりません。
点滴ステロイドについてです。
喘息発作が重く、
どうしても内服が難しい場面は確かにあります。
そのときに、
水溶性プレドニン
ソル・メドロール
ソル・コーテフ
を、何も考えずに選んでいないか。
ここは、一度立ち止まって考えたいところです。
喘息患者の中には、
アスピリン喘息
NSAIDs過敏喘息
が一定割合で存在します。
そして、
コハク酸エステル構造を持つステロイド静注製剤が、
このタイプの喘息を悪化させ得ることは、
実務レベルの注意喚起として知られています。
だから私は、
どうしても点滴が必要な場面では、
コハク酸エステル構造を持たない
デキサメタゾンやベタメタゾンを選び、
ゆっくり投与するようにしています。
それで絶対に安全かと言われれば、
そんな約束は、だれもしてくれません。
それでも、
内服で済むなら内服で。
点滴が必要なら、薬剤と速度に気を配る。
今の私の判断は、そこにあります。
前提・分析・結論
前提
・気管支喘息発作における全身性ステロイドの至適投与量は、現時点でも確定していない
・UpToDateでも、至適量は不明と明記されている
・日本の喘息治療ガイドラインでは、実務上の目安としてプレドニゾロン0.5mg/kg/日が示されている
・全身性ステロイドは、内服でも静注でも臨床効果は同等とされている
分析
・明確な正解がない以上、治療の焦点は「どれだけ使うか」ではなく「どう使うか」に移る
・内服可能な患者に対して、点滴ステロイドを選択する必然性は高くない
・喘息患者の中には、NSAIDs過敏喘息(アスピリン喘息)が一定割合で存在する
・コハク酸エステル構造を持つステロイド静注製剤が、これを悪化させ得ることは、添付文書上の明確な禁忌ではないものの、実務レベルでは注意喚起として共有されている
・したがって、点滴ステロイドは「強力な治療」ではなく、「余分なリスクを含み得る選択肢」として位置づけ直す必要がある
結論
・飲める喘息発作には、プレドニゾロン30mg前後の内服で足りることが多い
・点滴が必要な場合は、薬剤の構造と投与速度に配慮する
・喘息発作におけるステロイド治療は、量を決める作業ではなく、判断を置く作業である
こあら先生のひとりごと
ソル・メドロールの添付文書を見て下さい。「9.1.17 気管支喘息の患者」のところに、「薬物、食物、添加物などに過敏な喘息患者(アスピリン喘息の既往を有する患者等)には特に注意が必要である。本剤投与により、気管支喘息患者の喘息発作を悪化させることがある」って書いています。
救急外来に飛び込んできた患者さんがいますよね。この人はアスピリン喘息ではないって、診断できますか? 僕レベルでは不可能ですよ!
なので、飲めるなら「プレドニン錠 20~30mg / 日」ですし、飲めないなら「リンデロン注 4~8mg +生食100mlを、1時間かけてゆっくりと、6時間毎に点滴」としています。
参考文献
岐阜県医師会.
喘息ガイドライン―成人―(岐阜県版).
岐阜県医師会 公式サイト.
ガイドライン全文はこちら(岐阜県医師会)
最終閲覧日:2026年1月24日