導入
「〇〇さんが、けいれんしています!」
これは正しい表現です。
けいれん(convulsion)は症状です。
一方、てんかん(epilepsy)は診断名です。
てんかんと診断されている患者さんが、けいれんを起こすこともあります。
しかし、けいれんしている患者さんすべてが「てんかん」ではありません。
この区別は、初期対応の質を左右します。
まずは初期対応
僕の現場感覚としては、
「発作を止める」より先に「崩れない」ことが大事です。
(1)その場を離れない
まず応援を呼びます。
しかし、自分は離れない。
・転落しないか
・チューブが抜けないか
・ベッド柵にぶつかっていないか
安全確保が最優先です。
(2)気道を確保する
けいれん中は嘔吐の可能性があります。
側臥位にして、必要なら吸引。
「口に何かを入れる」はしません。
ここでの判断は単純です。
呼吸を守る。
(3)観察する
応援が来たら、第一発見者は観察に徹します。
・何をしている時に始まったか
・左右差はあるか
・眼球偏位はあるか
・発声はあるか
・持続時間は
処置は任せられますが、
この観察は、その場にいた人しかできません。
医師として呼ばれたら
僕の頭の中は、まず一言。
「まずは、発作を止める」
セルシン静注
ジアゼパム5〜10mg静注。
ただし、呼吸抑制に注意。
効果は速いが、持続は短い。
ここで安心しない。
イーケプラ点滴
再発予防として、レベチラセタム500mg程度を点滴。
速効性があり、呼吸抑制が少ない。
「次の発作を防ぐ」ための一手です。
それでも止まらないなら
ドルミカム持続静注。
場合によっては挿管。
けいれんが30分以上持続すれば、
後遺障害のリスクが上がります。
ここは迷いません。
参考文献
日本神経学会.てんかん診療ガイドライン2018. 「第8章 てんかん重積状態」では,けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきであり,30分以上持続すると後遺障害の危険性があると記載されている. https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html (最終閲覧日:2026年2月24日)
日本神経学会.てんかん診療ガイドライン2018 追補版2022. てんかん重積状態の治療フローチャートが公開されており,初期治療からの具体的アルゴリズムが提示されている. https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_tuiho_2018_ver2022.html (最終閲覧日:2026年2月24日)
そして、原因を考える
ここが重要です。
けいれんの原因は「てんかん」から考えない。
僕がまず考えるのは、
見逃したくない疾患です。
・くも膜下出血
・急性心筋梗塞
・胸部大動脈解離
大脳皮質への血流が途絶えれば、けいれんは起こります。
失神でも、けいれん様運動は起こります。
だから「てんかんだろう」と決めつけない。
けいれんの原因あれこれ
臨床では、こんな背景を考えます。
・認知症 → 症候性てんかん
・若年から反復 → てんかん
・アルコール多飲 → 離脱
・心房細動 → 脳梗塞
・がん患者 → 脳転移
・糖尿病治療中 → 低血糖
・慢性腎不全 → 尿毒症
・薬剤内服中 → テオフィリン中毒、ベンゾジアゼピン離脱 など
血糖は、その場で測ります。
これは例外なく。
僕の結論
(1)その場を離れず、応援を呼ぶ
(2)気道を守る
(3)発作を止める
(4)そして原因を探す
この順番が崩れなければ、致命的なミスは減ります。
前提・分析・結論
前提
けいれんは症状であり、てんかんは診断名である。
分析
初期対応は安全確保と気道管理が中心。
治療はベンゾジアゼピンで止め、その後再発予防。
原因は「てんかん以外」から広く考える。
結論
けいれん対応は、
「止める技術」と同じくらい
「疑う姿勢」が重要である。
こあら先生のひとりごと
教科書には手順が書いてあります。
でも、現場では順番が崩れます。
慌てて薬を取りに行く。
気道が後回しになる。
原因を考えない。
この場面では、私は一度立ち止まります。
まず呼吸。次に安全。最後に診断。
そこが、分岐点になることが多い。
インスタグラムならこちら(静岡こあらの臨床サポート)










こあら先生のひとりごと②
今(2026年2月24日)、イーケプラ点滴の添付文書を見てみたら、用法及び用量のところに、<てんかん重積状態>通常、成人にはレベチラセタムとして1回1000~3000mgを静脈内投与(投与速度は2~5mg/kg/分で静脈内投与)をするが、1日最大投与量は3000mgとする、と書いてありました。
すると、再発や重積化を避ける目的で、レベチラセタムを負荷投与する選択肢が出てきます。例えば、レベチラセタム2000mgを15分で点滴など。
以前の添付文書には、この記載は無かったです。なので、僕は、けいれん発作が止まった後の再発予防として500mgを1日2回で使用していたのです。
参考文献
イーケプラ点滴静注500mgの添付文書
製品名:イーケプラ点滴静注500mg(一般名:レベチラセタム)
PDF:https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00063084.pdf
掲載元:医薬品医療機器総合機構 添付文書(電子版)
最終閲覧日:2026年2月24日
「イーケプラ点滴静注500mg」てんかん重積状態に対する適応追加の承認を取得
ユーシービージャパン株式会社, 2022年12月23日
PDF:https://www.ucbjapan.com/sites/default/files/2022-12/20221223_LEV_StatusEpi.pdf
最終閲覧日:2026年2月24日