導入
くも膜下出血と言えば
突然発症の頭痛。
人生で最も強い頭痛。
これは、研修医でも知っています。
問題はそこではありません。
問題は
それらしくない人をどう診るか、です。
FACT
・くも膜下出血の典型症状は突然発症の激しい頭痛
・再出血のリスクは発症後24時間以内が最も高い
・初回受診時に診断されず帰宅し、その後再出血で死亡するケースが存在する
医療訴訟の中心に置かれやすい疾患の一つが、くも膜下出血です。
僕の現場感覚としては
教科書通りの症例は、むしろ少ない。
印象に残っているのは、次の3例です。
44歳女性。
「今朝から何だかぼんやりしている」と家族に連れられて救急外来受診。
強い頭痛の訴えははっきりしない。
→くも膜下出血。
67歳女性。
「昨夜から嘔吐が続いている」と消化器内科外来を受診。
腹痛は乏しい。
→くも膜下出血。
76歳女性。
「数日前から頭が重くて食欲がない」と一人で内科外来受診。
ゆっくり歩いて入室。
→くも膜下出血。
いずれも、いかにもという姿ではありません。
嘔吐が続いているとき
嘔吐が続く。
消化器疾患を考えるのは自然です。
でも、私はそこに必ず
くも膜下出血を並べます。
鑑別は広い。
・小脳梗塞
・急性心筋梗塞
・急性腎盂腎炎
・急性虫垂炎
頻度は高くない。
しかし、外したときの重さが違う。
診断は、頻度だけで決めない。
リスクの大きさで考える場面がある。
今の僕の結論であり持論です。
僕がもし患者さんの家族なら
「吐いているだけですね」と帰されるのは怖い。
少なくとも
私はCTを一度考えます。
前提・分析・結論
前提
くも膜下出血は典型症状だけでなく、非典型的な形で外来に現れる。
分析
嘔吐が持続している患者では、消化器疾患だけでなく頭蓋内病変を必ず鑑別に入れる必要がある。
特に重篤性の観点から、くも膜下出血を外してはいけない。
結論
嘔吐が続いている患者を診たら、私はくも膜下出血を一度疑う。
こあら先生のひとりごと
嘔吐。僕はまずくも膜下出血から考えます。逆に、胃腸炎という診断は封印しています。
秘書ユナのコメント
胃腸炎は外来で最も使いやすい診断名の一つです。
症状と整合しやすく、検査も最小限で済みます。
しかし同時に、重篤疾患を覆い隠すこともあります。
便利な診断ほど、使う順番を間違えると危険になる。
その自制が「封印」という言葉に込められています。