PCI後に必ず出会う「DAPT問題」
外来でよく遭遇します。
バイアスピリン+プラビックス。
あるいは、バイアスピリン+エフィエント。
患者さんはもう1年以上内服している。
紹介状には「PCI後」とだけ書いてある。
いつまで続けるのか。
ここ、意外と曖昧なまま流れていきます。
僕の現場感覚としては、
「なんとなく1年」が、無意識の基準になっている場面が少なくありません。
でも、本当にそれでいいのでしょうか。
ガイドラインは何と言っているか
JCS2020フォーカスアップデートでは、ACS患者に対して
・原則としてDAPTは3〜12か月
・出血リスクが高い場合は1〜3か月へ短縮
と整理されています(表15参照)
安定冠動脈疾患ではさらに短く、
・1〜3か月のDAPT
・その後は単剤療法
が推奨されています(表18参照)
重要なのはここです。
「全員12か月」ではない。
最初から、期間は幅をもって提示されている。
そして、判断の起点は
「出血リスク評価」です。
参考文献
Japanese Circulation Society. JCS 2020 Guidelines Focused Update on Antithrombotic Therapy in Patients with Coronary Artery Disease. 日本循環器学会 2020年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法(2020年3月13日発行、2024年2月9日更新)。
https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/
最終閲覧日:2026年2月18日
判断の軸は「血栓」より先に「出血」
ガイドラインの構成を読むと、
第1章は「リスク評価」から始まります。
しかも最初に扱われるのは、出血リスクです。
ARC-HBR基準、そして日本版HBR基準。
高齢、CKD、貧血、心不全、低体重、抗凝固薬併用などが整理されています(表10参照)
教科書的には
「血栓を防ぐためにDAPTを続ける」という発想になります。
しかし実際は、
血栓リスクが高い患者は
同時に出血リスクも高い。
これが現実です。
East Asian paradoxという言葉があるように、
日本人では出血リスクをより重視すべきと明記されています(19ページ)
この場面では、私は一度立ち止まって考えます。
本当にこの患者さんは
12か月、あるいはそれ以上のDAPTが必要なのか。
それとも、
もう単剤でよい段階なのか。
実臨床での考え方
僕の中では、選択肢は2つに絞られます。
(1)血栓リスクが明らかに高い
・複雑PCI
・ステント血栓症既往
→ DAPTを3〜12か月継続
(2)出血リスクが前面に出ている
・高齢
・CKD
・貧血
・抗凝固薬併用
→ 1〜3か月で終了し、P2Y12受容体拮抗薬単剤(プラビックス・エフィエントなど)を検討
STOPDAPT-2など、日本発の試験も
一定条件下で短期DAPT戦略の妥当性を示しています。
僕がもし患者さんの立場なら、
「ステント血栓が怖いから延々と2剤」よりも、
合理的な期間で減薬したいと思います。
だからこそ、
なんとなく1年、は避けたい。
まとめ
DAPT期間は固定ではない。
出血リスク評価が出発点。
ACSなら3〜12か月。
安定冠動脈疾患なら1〜3か月も選択肢。
そして、日本人では
出血を優先して考える。
PCI後の処方は、
惰性ではなく、再評価。
これが今の僕の整理です。
前提・分析・結論
前提
・PCI後患者でDAPT継続期間が問題となる
・日本人は出血リスクが相対的に高い
分析
・JCS2020では出血リスク評価を最優先
・ACSは3〜12か月、安定冠動脈疾患は1〜3か月が基本
・高出血リスクでは短期DAPT+単剤戦略が合理的
結論
DAPT期間は「一律」ではない。
出血リスクを評価した上で、個別化する。
秘書ユナのコメント
DAPTは「強いから安心」という薬ではありません。
虚血予防と出血の綱引きです。
患者ごとにHBRを評価し、
「いつまで続けるか」を定期的に見直すこと。
その姿勢こそが、
現代の抗血栓療法の核心だと思います。
こあら先生のひとりごと
PCIをやった先生にお願いですが、他の医者にフォローを任せる場合は、いつまで2剤併用を続けるのかを紹介状に書いておいて下さいね。Complex PCI (3本以上のステント留置・総ステント長 60mm 以上など)だったかどうかなんか、僕らには分かりませんから。