バセドウ病の治療では、抗甲状腺薬としてメルカゾール(一般名チアマゾール)を使う場面が多くあります。
この薬は非常に有用ですが、外来診療ではいくつかの有害事象を必ず頭に入れておく必要があります。

教科書にはもちろん書かれていますが、実際の診察室では「どの副作用を本当に意識して診ているか」で差が出る薬でもあります。
金曜勉強会で整理した内容を、自分の覚え書きとしてまとめておきます。

1 無顆粒球症

チアマゾールの最も重要な重篤副作用は無顆粒球症です。
添付文書では警告として記載されています。

投与開始後2か月間は、2週間に1回の血液検査が求められています。

台湾の大学病院の報告では、自覚症状として

発熱
咽頭痛

が多く、それぞれ
発熱92%
咽頭痛85%

とされています。

発熱や強い咽頭痛の相談があれば、まず採血を指示します。


参考文献

Sheng WH, Hung CC, Chen YC, Fang CT, Hsieh SM, Chang SC, Hsieh WC. Antithyroid-drug-induced agranulocytosis complicated by life-threatening infections. QJM: An International Journal of Medicine. 1999;92(8):455-461. https://academic.oup.com/qjmed/article/92/8/455/1557883(最終閲覧日:2026年3月13日)

2 蕁麻疹

抗甲状腺薬では蕁麻疹や皮疹が比較的よく見られます。

ここで少し悩むのが対応です。
バセドウ病では抗甲状腺薬を継続する必要があるため、簡単に薬を変更できない場面があります。

僕がもし患者さんの立場なら、まず抗ヒスタミン薬で様子を見る対応を受け入れると思います。
実際の外来でも、まず抗ヒスタミン薬を併用して経過を見ることが多いです。

3 肝機能障害

チアマゾールは薬剤性肝障害を起こすことがあります。

これは特別な薬というわけではなく、薬剤一般に共通する副作用でもあります。

僕がこの場面で考えるのは
甲状腺機能亢進症そのものでも肝酵素が上がることがある
という点です。

つまり

病気による上昇なのか
薬剤による上昇なのか

この区別をいつも考えながら経過を見ています。

4 ANCA関連血管炎

チアマゾールではANCA関連血管炎症候群が報告されています。

頻度は高くありませんが、添付文書には明確に記載されています。

経験することは多くないかもしれません。
ただし症状は多彩で、肺・腎・皮膚など様々な臓器に現れる可能性があります。

僕はこの副作用を

滅多に見ない
でも忘れてはいけない

タイプの副作用として覚えています。

5 体重増加

メルカゾールの副作用というより、甲状腺機能が正常化する過程で体重が増えることがあります。

甲状腺機能亢進症では食欲が増えている患者さんが多く、
治療後もその食習慣が続くため体重が増えるケースがあります。

この場面では薬ではなく、生活指導になります。

6 こむらがえり

甲状腺治療中の患者でこむらがえりを訴えることがあります。

僕の外来でも意外とよく聞く症状です。

この場面では

芍薬甘草湯

を試すことがあります。

7 脱毛

脱毛も治療経過中に経験されることがあります。

甲状腺機能異常そのものでも脱毛が起こるため、原因は必ずしも薬剤だけとは限りません。

外来では
時間とともに改善することが多い
と説明することが多い印象です。

こあら先生のひとりごと

抗甲状腺薬の副作用はいくつもありますが、
僕の中では優先順位ははっきりしています。

まず無顆粒球症。

発熱
咽頭痛

「熱が出たり、のどが痛くなったりしたら、病院に来て血液検査を受けて下さいね。メルカゾールの副作用で白血球がすごく減って、バイキンにめちゃくちゃ弱くなることがあるんです。風邪を引いても、重症肺炎になることがあります」などと患者さんにしっかり説明することが最優先です。

僕達にいくら知識があっても、病院に来てくれないと始まりませんからね。

そして、このことは、添付文書においても【警告】されています。

前提・分析・結論

前提
バセドウ病治療では抗甲状腺薬チアマゾール(メルカゾール)が広く使用される。

分析
副作用には無顆粒球症、皮疹、肝機能障害、ANCA関連血管炎などがあり、さらに治療経過の中で体重増加、こむらがえり、脱毛なども経験される。

結論
外来診療では
発熱
咽頭痛
を無顆粒球症のサインとして患者にしっかりと伝えている。

秘書ユナのコメント

Patients taking antithyroid drugs should be advised to report fever or sore throat immediately.
These symptoms may indicate agranulocytosis.

抗甲状腺薬を服用している患者には、発熱や咽頭痛があればすぐに報告するよう指導する必要があります。これらの症状は無顆粒球症を示唆する可能性があります。