肺炎で入院した患者さん。
血液検査を見ると、アルブミン(ALB)は 2.8 g/dL。

この数字を見た瞬間、
「低栄養では?」
そう考える医療者は少なくないと思います。

ただ、この方は 65 歳。
食事は普通に摂れており、体格も悪くない。
いわゆる「いかにも低栄養」という印象ではありませんでした。

さて、この ALB 2.8 を、どう解釈するか。
ここで一度、立ち止まって考えたいところです。

アルブミンは、どこで作られているか

アルブミンは、肝臓で合成されます。
これは、誰もが知っている事実です。

一方で、同じく肝臓で作られる物質があります。
CRP(C-reactive protein)です。

ALB も CRP も、肝臓由来。
この2つは、同じ工場で作られていると考えると、話が整理しやすくなります。

炎症が起きたとき、肝臓で何が起きているか

肺炎などの急性炎症が起こると、
体は「今すぐ必要なもの」を優先します。

その代表が CRP。
炎症の指標として、迅速に大量生産されます。

その結果どうなるか。
肝臓のリソースは、CRP製造に振り向けられます。

相対的に、
アルブミンを作る余力が落ちる。

この状態を、
「肝臓が ALB 製造ラインを止めて、CRP を作り始める」
そんなイメージで捉えると、臨床感覚とよく一致します。

実際、
CRP が高い患者さんほど、ALB が低い。
そう感じた経験は、多くの医療者にあるはずです。

では、この ALB 2.8 は様子見でよいのか

炎症による一過性の低下。
そう考えれば、「とりあえず様子見」という判断も成り立ちます。

ただし。
ここで思考を止めるのは、少し危険です。

なぜなら、この患者さんには
・過去データがない
・他院通院歴もない

つまり、「元々どうだったのか」が分からない。

気になる所見は、ALB だけではない

データをもう一度、冷静に眺めます。

・血小板 9.5 万
・尿蛋白 2+

この2点は、見逃しにくい違和感です。

もし、
もともと肝硬変があった方が肺炎を起こしたのだとしたら。

あるいは、
ネフローゼ症候群の方が肺炎をきっかけに顕在化したのだとしたら。

ALB 低値の意味は、
「炎症による一過性」だけでは説明できなくなります。

低アルブミン血症を見たときの思考整理

まとめると、こうなります。

・低ALB = 低栄養
と短絡しない。

・炎症の有無(CRP)を必ず確認する。
・肝臓の背景疾患を疑う。
・尿蛋白や血小板など、周辺データを見る。

アルブミンは、
単なる「栄養マーカー」ではありません。

体のどこで、何が起きているか。
その結果として、今の数値がある。

そう捉える方が、臨床では自然です。

秘書ユナのコメント(読者の方へ)

ALB を見た瞬間に「栄養」と結びつける思考は、とても分かりやすい反面、落とし穴もあります。
CRP、血小板、尿蛋白といった「周辺情報」を同時に拾えるかどうかで、鑑別の深さは大きく変わります。
数字を単独で見るのではなく、「肝臓が今、何を優先しているのか」という視点を持つと、判断が安定します。

前提・分析・結論

【前提】
アルブミンは肝臓で合成され、炎症時にはCRPと産生リソースを共有する。

【分析】
急性炎症ではCRP産生が優先され、相対的にALBが低下する。一方で、肝硬変やネフローゼなどの基礎疾患が隠れている可能性もある。

【結論】
低アルブミン血症は「栄養不足」と決めつけず、炎症と背景疾患の両面から評価するのが臨床的に妥当である。