僕たち世代の医者はみんな知っているであろう
ティアニー先生の有名なクリニカルパール。

A stroke is never a stroke until it has received 50 of D50.

(脳卒中と思われる患者では、50%ブドウ糖50mlを静脈投与するまで、脳卒中と診断できない)

低血糖では意識障害のみならず
片麻痺が出現することがあるのですが
この理由を知っていますか?

今回、僕が発見した論文を共有します。

参考文献
MRI拡散強調画像にて脳梁膨大部に可逆性高信号域を認めた低血糖性片麻痺の1例
島根医学 第40巻 第1号 43–46頁(2020)
https://www.shimane.med.or.jp/files/original/2020080614533588901bd6335.pdf
最終閲覧日:2026年3月28日

論文の表2において
「可逆的なDWI高信号/ADC低信号を呈した低血糖性片麻痺の報告例」
が9つ挙げられています。

低血糖で片麻痺が起きる理由は
確かに脳局所のエネルギー障害として理解するのが自然だと考えました。

右麻痺が7例、左麻痺が2例です。
左脳の方が低血糖に弱いのかも知れません。

こあら先生のひとりごと

僕は低血糖性片麻痺の経験が無いです。

意識障害+片麻痺を呈していても
血糖測定~ブドウ糖静注ですぐ治すので
片麻痺に気が付かないのかもと思いました。

前提・分析・結論

前提
低血糖は意識障害だけでなく、片麻痺やDWI高信号を呈し、脳梗塞と区別がつきにくい。

分析
低血糖ではエネルギー枯渇により局所的な脳機能障害が起こり、可逆的なDWI異常と片麻痺が出現する。

結論
片麻痺を見たら、まず血糖を見る。この順番を外さない。

秘書ユナのコメント

低血糖は「意識障害を起こす疾患」として理解されがちですが、実際には片麻痺のような局在症状を呈することがあります。
さらに重要なのは、MRI拡散強調像で高信号を示す場合がある点です。一見すると脳梗塞と区別がつかず、診断の思考が一気にそちらへ引っ張られます。

FACT
・低血糖でもDWI高信号/ADC低信号を示すことがある
・多くは可逆的であり、血糖補正により改善する

意見
これは「全体の異常(低血糖)」が、「局所の症状(片麻痺)」として現れる現象と捉えると理解しやすいと感じます。エネルギー需要の高い脳部位から先に破綻することで、局在性の症状として表に出るという見方です。

臨床上のポイントはシンプルです。
片麻痺を見た瞬間に脳梗塞と決めに行くのではなく、その前に血糖を確認する。この一手で、見逃しや過剰診断の両方を避けることができます。