よく使う薬ほど、静かに知っておきたい副作用
外来で、あるいは病棟で。
皮膚に、つやのある水疱がぽつりと出てきた高齢患者さんを見たとき、何が頭に浮かぶでしょうか。
感染症でしょうか。
外傷でしょうか。
それとも、皮膚科に任せる話でしょうか。
今回の話題は、DPP-4阻害薬と水疱性類天疱瘡です。
珍しい話ではありません。ただし、知っていないと見落としやすい。そんな位置づけの副作用です。
参考文献
日本皮膚科学会.
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)診療ガイドライン 補遺版.
日本皮膚科学会雑誌 第133巻 第2号.
ガイドライン全文はこちら(日本皮膚科学会)
最終閲覧日:2025年12月27日
DPP-4阻害薬と類天疱瘡の事実整理
まずは事実から整理します。
DPP-4阻害薬は、2型糖尿病治療で極めて頻用される薬剤群です。
トラゼンタ、ジャヌビア、エクア、ネシーナ、テネリア、スイニー、オングリザ、ザファテック、マリゼブ。
どれも日常診療で見慣れた名前でしょう。
そして、これらすべての添付文書に、類天疱瘡の記載があります。
頻度は不明。
しかし、記載があるという事実は重い。
つまり、特定の一剤が危険なのではありません。
DPP-4阻害薬という薬効群全体に共通する注意点です。
水疱性類天疱瘡の皮膚所見を、文章で捉える
水疱性類天疱瘡の皮疹は、いくつかの特徴があります。
・高齢者に多い
・緊満性の水疱である
・水疱壁が厚く、破れにくい
・内容液は透明から淡黄色
・周囲の炎症が意外と乏しいことがある
赤くただれた皮膚というより、
年齢を感じさせる薄い皮膚の上に、つるんと張った水疱が乗っている。
そんな印象です。
かゆみが先行することもありますが、強い痛みやびらんが前景に出ない症例も少なくありません。
そのため、初期には見過ごされがちです。
DPP-4阻害薬関連例では、とくに炎症が目立たない非炎症型の報告が多いことも、診断を遅らせる一因になります。
内科医として、まず考えること
この皮疹を見たとき、内科医としてまずやることは多くありません。
・内服薬を確認する
・DPP-4阻害薬の有無を確認する
・皮膚科に相談する
それだけです。
自己判断で中止するかどうかを即断する必要はありません。
しかし、薬剤性の可能性を念頭に置いたうえで、専門医につなぐ。
この一手が、患者さんの経過を大きく左右します。
画像との付き合い方について
水疱性類天疱瘡は、画像を見ると一瞬で理解できます。
だからこそ、多くの医療サイトやブログでは実写画像が使われています。
一方で、学会画像や医療メディア画像は、著作権の取り扱いが非常に繊細です。
出典を明記しても、二次利用が許されないケースは少なくありません。
今回のブログでは、あえて実写を使わず、教育用イラストを採用しました。
形態の理解には十分であり、ブログとしての安全性も高い。
長く残す記事としては、こちらの選択が自然だと判断しています。

処方は、変わるのか
この副作用を知ったからといって、DPP-4阻害薬を避ける必要はありません。
有効性、安全性ともに優れた薬剤群である事実は変わらない。
ただし、
高齢患者さんに水疱性皮疹が出たとき、
頭の片隅に、DPP-4阻害薬という選択肢が浮かぶかどうか。
それだけで十分です。
前提・分析・結論
前提
DPP-4阻害薬は日常診療で頻用されている
分析
すべてのDPP-4阻害薬に水疱性類天疱瘡の記載があり、非炎症型は見逃されやすい
結論
皮膚に緊満性水疱を見たとき、薬剤歴を一度だけ見直す価値がある