― NSAIDs中止という現実的な一手 ―
前提
大腸憩室出血は、止まっても「終わった感じ」がしない疾患です。
入院を何度も繰り返す方が少なくなく、外来で「またです」と言われる側も、言う側も、どこか消耗する。
毎日お世話になっている「今日の臨床サポート」では、
・大腸憩室出血の再出血は1年間に約20%の頻度で発生する
・大腸憩室出血の共通したリスク因子は、アスピリン、NSAIDs、高血圧症がある
と整理されています。
この数字自体は、臨床感覚とも大きくずれません。
分析(FACT)
参考文献
Nagata N, Niikura R, Aoki T, et al.
Impact of discontinuing non-steroidal antiinflammatory drugs on long-term recurrence in colonic diverticular bleeding.
World Journal of Gastroenterology. 2015;21(4):1292–1298.
論文全文はこちら(PMC)
最終閲覧日:2026年1月6日
参考文献
[日本消化管学会].
大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン.
日本消化管学会 公式サイト(Minds).
ガイドライン全文はこちら(Minds)
最終閲覧日:2026年1月6日
まず、事実関係を淡々と確認します。
(1)再出血は珍しくない
観察研究ベースではありますが、大腸憩室出血は1年以内に約5人に1人が再出血します。
「一度止まったから安心」とは言いにくい疾患です。
(2)NSAIDsは明確な再出血リスク
2015年のWorld Journal of Gastroenterology掲載論文では、
NSAIDsを継続した群と中止した群で、再出血率に大きな差が出ています。
Kaplan–Meier曲線を見ると、
継続群では早期から再出血が積み上がり、
中止群では再出血がかなり抑えられている。
統計的にも有意差あり、という結果でした。
(3)ガイドラインの立場
日本消化管学会の大腸憩室症ガイドラインでも、
「NSAIDsおよびアスピリンは大腸憩室出血および再出血リスクを高めるが、アスピリン以外の抗血小板薬, 抗凝固薬は一定の見解が得られていない(13ページより引用)」
と明記されています。
エビデンスレベルは高くありませんが、方向性は一貫しています。
私の意見
ここからは、私の考えです。
正直なところ、
「外科的切除をどこまで本気で勧めるか」
という議論よりも、先にやることがあると思っています。
それが、NSAIDsの見直しです。
アスピリンは、二次予防なら簡単に止められません。
一方、NSAIDsは代替が効くケースが多い。
・アセトアミノフェン
・外用薬
・痛みの評価そのものの見直し
こうした選択肢を丁寧に積み重ねるだけで、
再出血リスクをかなり下げられる可能性がある。
「手術をするかしないか」の前に、
「薬をそのままにしていないか」
ここを一度、必ず立ち止まって確認したいところです。
結論
FACTとして、
大腸憩室出血は再発しやすく、NSAIDsは再出血リスクを明確に高めます。
私の結論は、
再出血を繰り返す患者さんほど、
NSAIDs中止は「まず最初に検討すべき一手」だということ。
派手さはありませんが、
現場で効く、静かな介入です。
明日からの行動メモ
・再出血歴のある患者さんでは、必ずNSAIDsを棚卸しする
・「本当に必要か」「代替できないか」を一度言語化する
・アスピリンは一次予防か二次予防かを明確に分けて考える
この3点だけでも、外来の景色は少し変わる気がしています。
こあら先生のひとりごと
紹介した論文の Figure 2 を見てみて下さい。NSAID止めようと思いますよ。