こあら先生の覚え書き

外来や救急でDダイマーが高いと、つい「血栓があるのではないか」と考えます。
これは間違いではありません。ただ、少しだけズレています。

僕の理解はシンプルです。

Dダイマーは血栓そのものではなく、
血栓が壊された結果です。

血栓ができると、体はそれを溶かそうとします。
そのときに出てくるのがフィブリン分解産物(FDP)で、その一部がDダイマーです。

つまり

血栓ができた
溶かされた
その結果としてDダイマーが上がる

この順番になります。

僕の現場感覚としては、ここが一番重要です。

Dダイマーは
「今そこに血栓があるか」を直接示す検査ではない

「最近どこかで血栓ができて、それが処理された形跡があるか」を見ている検査です。

この視点で見ると、いくつかの疾患がきれいに並びます。

肺塞栓症ではDダイマーが上昇します。
大動脈解離でも上昇します。
深部静脈血栓症でも上昇します。

ただし、いずれも理由は同じです。

血栓が存在するからではなく、
血栓が壊されているから上がる。

ではDICはどうか。

DICでは全身で血栓が作られます。
フィブリンが大量に生成され、それと同時に線溶も進みます。

結果として

フィブリノーゲンは低下し
血小板も低下し
凝固因子が消費されてINRは延長し
FDPとDダイマーが上昇する

この一連の流れになります。

ここで私は一度立ち止まって考えます。

Dダイマーが高い
これは何を意味しているのか。

Dダイマーは非常に上がりやすい検査です。

感染でも上がる
炎症でも上がる
悪性腫瘍でも上がる
高齢でも上がる

だから、陽性だけではほとんど何も決まりません。

Dダイマーの使い方

この時点で、私の中では選択肢が2つに絞られます。

診断に使うのか
除外に使うのか

私が選ぶのは後者です。

つまりーー

Dダイマーが低い
血栓性疾患はかなり考えにくい

Dダイマーが高い
それだけでは何も分からない

この非対称性が、この検査の本質だと思っています。

現場でのDダイマーの使い方

僕が肺塞栓症を疑ったとしましょう。疑った時点で、造影CT検査をオーダーします。血液検査項目を選択するときに「Dダイマー」はクリックしますが、その結果が出る前に造影CTに行ってもらいます。

下肢深部静脈血栓症を疑った場合、下肢静脈エコーをオーダーします。もちろん血液検査はするので「Dダイマー」もクリックしますが、その意味合いは僕の中では「血糖値」と同じくらいです。

逆に、肺塞栓症や下肢深部静脈血栓症を、ほとんど疑っていない時、Dダイマーが陰性だと安心できるのです。

つまり、どれくらい「検査前確率の精度を高められるか」が勝負なのですが、その方法は、参考文献の27ページの表7・28ページの表8にまとめられています。

基本的にはそれっぽい症状の有無や、血栓ができやすい状態であるかどうかですが、僕が意識しているのは「肺塞栓や下肢深部静脈血栓症の既往があるかどうか」です。再発もありますからね。


参考文献
JCS 2025 Guideline on Pulmonary Thromboembolism, Deep Vein Thrombosis, and Pulmonary Hypertension
日本循環器学会.肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン(2025年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Tamura.pdf
最終閲覧日:2026年3月20日

秘書ユナのコメント

Dダイマーは「陽性の意味」を追いかけるほど迷いやすい検査です。
臨床では、前確率評価(Wellsスコアなど)と組み合わせて、「低リスク+Dダイマー陰性」で安全に除外する使い方が基本になります。
数値に引っ張られるのではなく、どの場面で使う検査かを決めておくことが、実践では重要になります。

前提・分析・結論

前提
Dダイマーは血栓そのものを示す検査ではなく、フィブリン分解産物として「血栓が壊された結果」を反映する指標である。

分析
感染・炎症・悪性腫瘍・加齢などでも容易に上昇するため、陽性所見の解釈には限界がある。一方で感度は高く、低値であれば血栓性疾患の可能性を大きく下げることができる。

結論
Dダイマーは診断の決め手ではなく除外のために使う検査と位置づけ、検査前確率と組み合わせて判断する。これが今の私の使い方である。

こあら先生のひとりごと

この検査は、拾う力は強いが、当てる力は弱い。
抗核抗体なんかもそうですよね。
陰性ならSLEはほぼ除外できる。