セフトリアキソンは本当に安全か
セフトリアキソン。
非常によく使われる第3世代セフェムです。
僕も日常診療で頻用します。
1日1回投与で済む利便性は大きい。
しかし。
便利な薬ほど、背景を忘れやすい。
教科書的には「広域で使いやすい抗菌薬」と言えますが、実際の診察室では別の注意点があります。
カルシウムとの沈殿問題
セフトリアキソンはカルシウムと反応し、不溶性の沈殿を形成します。
これは理論ではなく、実際に問題になった事象です。
血管内で沈殿すれば、当然リスクになります。
だから添付文書には
「カルシウムを含有する注射剤又は輸液と同時に投与しないこと」
と明記されています。
この一文は、重い。
参考文献
Rocephin for Intravenous Injection – Package Insert
ロセフィン静注用 添付文書.
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00049429.pdf
(最終閲覧日 2026年2月21日)
2007年の新生児死亡例
2007年に、新生児で死亡事故が報告されています。
カルシウム含有輸液と併用され、肺や腎に沈着したとされる症例です。
その後、米FDAが警告を出しました。
2009年の医薬品安全性情報にも記載があります。
僕はここを一度読んでから、処方の姿勢が変わりました。
参考文献
中村 均,坂口 美佐,井上 純子.
Risk Management of Infusion Admixture Changes
輸液配合変化のリスク・マネジメント.外科と代謝・栄養 51(5):235-245,2017.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/51/5/51_235/_article/-char/ja
(最終閲覧日 2026年2月21日)
参考文献
国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部.
医薬品安全性情報 Vol.7 No.10(2009/05/14)
セフトリアキソンとカルシウム含有製剤の相互作用に関する安全性情報を含む号.
https://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly7/10090514.pdf
(最終閲覧日 2026年2月21日)
カルシウムを含む点滴は何か
カルチコール。
ヴィーン。
ソルアセト。
ラクテック。
トリフリード。
ビーフリード。
ハイカリック。
覚えられますか。
僕は無理です。
この場面では、私は一度立ち止まって考えます。
「全部覚える」という戦略は、破綻する。
私たちの病院の運用
だから当院では、ルールを単純化しています。
セフトリアキソンは常に単独投与。
側管投与は禁止。
前後で生理食塩水フラッシュ。
覚えるべきは
「単独投与」
それだけ。
個人の記憶力に依存しない運用にしています。
僕の現場感覚としては、
安全は知識量ではなく、設計で担保されるものです。
前提・分析・結論
前提
セフトリアキソンは広く使用されるが、カルシウムと沈殿を形成する。
分析
カルシウム含有輸液の種類は多く、完全に記憶することは現実的ではない。
過去に死亡例が報告され、FDA警告も出ている。
結論
運用は単純に設計する。
セフトリアキソンは単独投与を原則とする。
秘書ユナのコメント
セフトリアキソンとカルシウムの沈殿形成は、医療安全の古典的テーマですが、日常診療では忘れられがちです。
大切なのは、知識を「覚える」ことよりも、事故が起きないように「仕組みにする」ことです。
抗菌薬選択と同じくらい、投与経路設計も重要な臨床判断です。
こあら先生のひとりごと
全部覚えられませんからね。
だから、覚えなくて済むようにする。
それだけの話です。