日常診療で、腎機能が低下している患者さんに抗血栓薬を処方するとき、どこまで量を調整する必要があるのか、迷う場面があります。

特に、抗血小板薬と抗凝固薬が混在していると、何となく全て減らしたくなる心理が働きがちです。

今回は、金曜勉強会で整理した内容をもとに、腎機能と抗血栓薬の関係を、現場目線でまとめておきます。

抗血小板薬は、腎機能をあまり気にしない

まず押さえておきたいのは、抗血小板薬と抗凝固薬は、腎機能に対する扱いが本質的に異なる、という点です。

抗血小板薬 というのは、バイアスピリン® ・プラビックス® ・エフィエント® ・プレタール®などです。

これらは、腎機能低下があっても、原則として通常量で使用します。

腎排泄に強く依存していないため、eGFRを理由に機械的に減量する必要はありません。

もちろん、高齢・出血リスク・併用薬などは別途考慮しますが、「腎機能が悪いから減らす」という判断軸は基本には置きません。

直接経口抗凝固薬は、腎機能がすべて

一方で、直接経口抗凝固薬(DOAC)は考え方が真逆です。

・プラザキサ®(ダビガトラン)

・イグザレルト®(リバーロキサバン)

・リクシアナ®(エドキサバン)

・エリキュース®(アピキサバン)

これらは、腎排泄の影響を強く受けます。

腎機能が低下していれば減量が必要になり、一定以下では禁忌になります。

例えば ・プラザキサ®:eGFR 30未満で禁忌 ・イグザレルト®:eGFR 15未満で禁忌 ・リクシアナ®:eGFR 15未満で禁忌 ・エリキュース®:eGFR 15未満で禁忌

ここは暗記というより、必ず添付文書とeGFRを見て判断する、という姿勢が自然だと思っています。

ワーファリンは、腎臓ではなくINRを見る

経口ビタミンK拮抗薬であるワーファリン®は、さらに立ち位置が異なります。

ワーファリンは、腎機能に応じて用量を決める薬ではありません。

腎機能が良くても悪くても、 ・PT-INRを測定し ・その結果に基づいて用量調整を行う

この一点に尽きます。

腎機能低下例であっても、INRが適正範囲に入っていれば、それがその患者さんの適量、という考え方になります。

前提・分析・結論

前提 抗血栓薬は、抗血小板薬・DOAC・ワーファリンで、腎機能との関係が大きく異なる。

分析 抗血小板薬は原則通常量、DOACは腎機能依存、ワーファリンはINR依存という整理が有効である。

結論 腎機能を見る前に、まず薬剤のカテゴリーを分けることが、抗血栓療法の第一歩になる。

秘書ユナのコメント

この整理のいちばんの価値は、
「腎機能を見る前に、まず薬の性格を見よ」
という順番を、明確に言語化している点だと思います。

抗血栓薬で迷う場面の多くは、
腎機能という強い情報に、思考が引きずられてしまうことから始まります。

こあら先生が示しているのは、
抗血小板薬は、腎機能とは距離がある
DOACは、腎機能が主役
ワーファリンは、INRだけを見る

という、ごくシンプルな三分割です。

この三分割が頭に入っていると、
添付文書を開く前から、
「どこを確認すればよいか」が自然に見えてきます。

判断が速くなるというより、
判断が雑にならない。
そのための整理だと、私は受け取りました。

こあら先生のひとりごと

DOACって4種類ありますよね。どれを選択するのか問題ですが、僕としては「1日2回とか飲まないですよ、僕だって飲みませんよ!」と思っているので、1日1回の「イグザレルト」「リクシアナ」の2択になります。

そして、腎機能(+年齢・体重・併存疾患)によって減量するのですが、イグザレルトは15mg錠と10mg錠の2種類ですが、リクシアナは60mg錠・30mg錠・15mg錠の3種類あります。

出血リスクが高い患者さんに対する選択肢として15mg錠があるという理由で、ぼくは「リクシアナ」を使っています。

秘書ユナのコメント(その2)

ところで、こあら先生は「eGFR」で説明していますが、これは厳密には間違いです。

DOACの添付文書を見て下さい。「CCr : クレアチニンクリアランス」を見て減量するように書かれています。

eGFRは、年齢・性別・血清クレアチニン濃度で計算します。

CCrは、年齢・性別・血清クレアチニン濃度・体重で計算します。

慢性腎臓病の重症度判定などは「eGFR」が使われていますが、薬剤の投与量調節には「CCr : クレアチニンクリアランス」を使うのが正確ですよ。