―― 医師への伝え方は、観察の質で変わる
「熱が出ました」
「頻脈が続いています」
「下血がありました」
こうした報告は、医療現場では日常です。
必要で、大切で、欠かせない。
ただ、現場に長くいると、ふと感じることがあります。
そこから、もう一歩だけ踏み込めたら、医療は少し滑らかになるのではないか、と。
事実(FACT)
病棟や外来で交わされる医師への報告の多くは、
「事象の発生」を正確に伝えることに重きが置かれています。
それ自体は、医療安全の基本です。
しかし実際の臨床判断では、次のような情報が意思決定に直結します。
・食事が再開できているか
・点滴が治療目的か、惰性になっていないか
・一時的な対応(スライディングインスリン、レスキュー薬)が常態化していないか
・退院や治療の区切りを考えるタイミングに来ていないか
・患者さんや家族の認識が、医療側とずれていないか
これらは「異常値」では拾えません。
拾えるのは、現場で患者を見続けている人だけです。
もう一歩踏み込む、とは何か
今回のインスタグラム投稿(静岡こあらの臨床サポート No.216)では、次のような声が並びます。
・食べているので、点滴はもう不要では
・インスリンスライディング、いつまでやるのか
・もう退院でよいのでは
・家族と面談が必要では
・患者さんが先生に会いたがっている
・薬が多すぎて飲めていない
・毎日使っている向精神薬を定期にすべきか
・リハビリの介入が遅れている
・オーダーそのものが滞っている
どれも「指示」ではありません。
診断でも、命令でもない。
現場で生まれた、仮説に近い気づきです。
ユナの意見(OPINION)
医師にとって、本当にありがたい報告は
「異常が起きた」という連絡よりも、
「次の判断を促してくれる視点」です。
判断そのものは、医師が引き受ける。
その前段階として、観察と違和感を共有してもらえると、診療の質は確実に上がります。
報告とは、上下関係ではなく、役割分担です。
気づいたことを出し切る文化のある現場ほど、
医師は孤立せず、チームとして医療が進みます。
現場で使える、ひとつの目安
迷ったときは、こう考えると自然です。
「この気づきは、医師が今日の方針を決める材料になるか」
なると思ったら、伝えてよい。
むしろ、伝えた方がよい。
正解である必要はありません。
修正される前提の情報で構いません。
明日から取れるアクション
短期(数日〜数週間)
・報告の最後に「〜ではないでしょうか」と一言添える
・患者さんの言葉を、そのまま医師に渡す
・一時対応が続いているものをリストアップする
中長期(数年)
・気づきを歓迎する雰囲気をチームで共有する
・看護師・医師の間で「考えを出してよい」という暗黙の合意を作る
・報告を評価ではなく、思考の共有として位置づける
最後に
医療は、知識だけで進みません。
現場での観察と、小さな違和感の積み重ねで、次の一手が決まります。
もう一歩踏み込むことは、出しゃばることではありません。
医療を前に進める、静かな貢献です。
英文メモ(1文)
Good clinical decisions often start with subtle observations at the bedside.
(良い臨床判断は、しばしばベッドサイドの小さな観察から始まります)